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「え、でも僕少し手伝っただけですし…ほとんど『作ってもらった』って感じなんですが」 「そう?でも食器とか出してくれたし…あと味見もしてくれたし…」 「あ!味見なら任せてください!さっき一口食べたときも、すごく美味しかったので!」 間違いなしです、ばっちりです、ときらきらした目で太鼓判を押してくれたので、味は問題ないらしい。優秀な味見係の言葉を信じよう。そもそも敦くんは謙遜ぎみだったけど、本当、いろいろ手伝ってくれたし。それ混ぜるだけですか?手伝いますか?とか僕がこっちの火見ときますか?とか、台所を行ったり来たりしてくれた。優しい。いいこ。出来上がったばかりの食事を囲んで、ふたり揃って両手を合わせて深々と頭を下げる。いただきます、と。声も揃う。 「…うん、やっぱり美味しいです!」 「本当?どれどれ……ん!うん!美味しい!大満足な出来です!」 にこにこ食べてる敦くんを見て、私もおんなじようににこにこ頬が緩む。お箸を動かす手を止めないまま、敦くんが「美味しい」を何度も繰り返す。べつに嘘だなんて疑ってないのに、「本っ当に美味しいんですよ!」って興奮したように。自分ばっかりじゃなくてさんも食べて、と促す意味もあるのかもしれない。私もはりきって、よーしもっと食べるぞーという気持ちで食卓を見る。けど、またすぐに敦くんの顔を見る。 「むぐ…あ、あれ?食べないんですか?」 「ううん。食べるよ?食べるけどね」 一口食べて、へらっとだらしなく笑って、「美味しい〜!」と声に出す。敦くんがそんな私を見て、よかったよかったって顔で微笑んだ。 「いや、なんかね、敦くん…おいしそうに食べるなあ、幸せそうに食べるなあ〜って」 「えっ!…そ、そうですかね?自分ではあんまりわかんないんですけど…食べてるときの顔って」 「本当〜に、おいしそうで、幸せそうだよ」 鏡で見せたいくらい、と云ったら、敦くんはちょっと恥ずかしそうに、身を引っ込めた。それは勘弁してください、みたいな反応。本当すてきな表情だけどな。私がにこにこしてたら、敦くんが「それを云うなら、」と何やら反撃をしようとしてくる。 「さんだってそうですよ。嬉しそうに食べてます。鏡、ないですけど…」 「ん?そうかなあ」 「そうです!」 「そうだとしたらたぶんそれは、敦くんと一緒に食べてるからだと思うな」 私の言葉に、敦くんがきょとんとした顔で沈黙する。私がなんの照れも無くそう云えてしまうのは、事実だからっていうのも勿論だけど、この後の敦くんの反応が、予想できてしまうからだ。敦くんは、まばたきを二度、三度、と繰り返し、そして、はっ!としたかと思えば、真っ赤になって前のめりになる。 「ぼ、僕もですよ!?さんと一緒だからおいしくて、幸せで、」 「え〜?本当かなあ?私が云ったから慌てて真似っ子してない?無理して云わせちゃってない?」 「ちがいます、違います!本当にそうなんです!」 ああそう云えばよかったのかそれが正解だったのか、自分がご飯のことしか考えてないみたいになってしまった、気が回らなかった、みたいな焦り方だ。敦くんがあんまり必死に云うから、私はそんな様子に声を出して笑ってしまった。笑われたことで、敦くんもやっと、「か…からかってませんか?」と気付く。むう、と少し拗ねたように。けど、まだ顔が赤い。 「からかってないよ。敦くんとおうちでこうやって過ごせるのが、楽しくって仕方ないだけ」 「そう…なんですか? …あ!僕も、ですよ!」 ああ、今度の「僕も」は、さっきより早かった。すぐ気づいた。私はまた、くすくす笑う。まだまだ、時間はいっぱいある。まだまだ一緒に過ごそう。楽しくって嬉しくって、ふたりっきりの時間を。 あったかおうち時間。//200501 |