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しかし、さてお部屋にどうぞと呼んだところで、特に私の部屋におもしろいものはないんだけど。とりあえず用意したお気に入りのお菓子と、お茶を、テーブルの上に置いて。そのテーブルをはさんで、向かい合う。 「……な、なにしようね」 「何かしたいことがあって呼んだのか?」 「いや…うーん…特に考えてなかったかな…」 「そうか」 いや、ほんとうに、何か二人でできるゲームがしたかったわけではないし、特別聞いてほしい話があったわけでもない。まったくの無計画。ただ、他のみんなより先に斬島と約束をとりつけてキープしなければという気持ちで、やっきになっていたというか。ちら、と見れば斬島はお菓子に手を伸ばしていた。私もとりあえず食べる。 「このお菓子おいしいよね」 「ああ、うまいな」 「この前平腹に見つかって全部食われた」 いや、そんなはなしを、したいわけではないんだけど。ううんでも他に重要な話題があるわけでもないし。しばらく、ふたりしてぱくぱくお菓子を食べながら、他愛もない話を続ける。べつに改まって部屋に呼ばなくてもできるような話。二人のときじゃなくてもできるような、なんでもない話。しかもだいたい私が話して、斬島が相槌を打つ流れだ。そうなのか、とか、ああそうだな、とか。 「……なんか、あれだね。ごめん。特にやりたいこととか話したいことがあったわけでもないのに…斬島の休日を独占している……」 もしかしたら、こうやって私とめちゃくちゃ暇な会話をしているより、谷裂と鍛練しているほうが斬島のためになったのでは?とか、木舌と一杯やったほうが斬島も楽しかったのでは?とか、ちょっと思う。私がしょんぼり反省していたら、斬島が心なしかきょとんとした顔で、当たり前のようにこう言った。 「いや、最初から、そうだろうと思っていた」 「…なにが?」 「何か特別用があるわけではないだろうなと」 最初から、とくに用事があるとはおもってない、目的とか話したいことがあって呼んだわけじゃないって予想してた、と。わかってたと。私はちょっとぽかんとしてから、ハッ、と顔を青くする。 「いや、ちがうよ?暇つぶしで呼んだとかじゃないよ!?退屈にさせてやろうとか嫌がらせじゃないよ!?貴重な休みを拘束してやろうとか、ほんとそんなことは」 「ああ、わかっている」 「で、でも…」 「用がなくても、一緒に過ごしていいものじゃないのか」 用がないと、俺はお前の部屋に呼ばれないのか。真っ直ぐに、じっとこちらを見ながら、斬島が言う。 「……よ、」 「…」 「呼んでも、いいもの?一緒に、過ごしていい、もの?」 「…俺は、そう思っていたんだが」 違うのか、と心なしかしょんぼりした様子の斬島に、私はうまく言葉が出てこない。なんだか、ものすごく照れくさくて、ものすごく、ぜいたく。顔があつくなってくるのを誤魔化すように、目を泳がせながら、お菓子の袋に手を伸ばす。伸ばした先で、斬島の指が触れた。お菓子、もうなかった。全部、からっぽだった。 視線を上げれば、斬島と目が合う。少しの沈黙。「……違うのか?」尋ねる声が、今度は、しょんぼりなんてしていない。 「ち…ちがわない、と、おもう」 (おもうっていうか、うん、絶対)//あたりまえに君の隣//200430 |