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「これ、俺のじゃねーよな」 胸の真ん中、より少し右。膨らみを指先で撫でているときに見つけたキスマークに、俺はスッと顔を上げた。俺の首に腕を回しながらその行為を受け入れていたが俺と目を合わせて、小さく笑う。「よく分かったね」悪びれる様子もなくそう言ったに、心のなかだけで舌打ちしておいた。怒り、という感情にも少し似ていたけれど、呆れのような、侮蔑のような、そんな感情のほうが色濃く含まれている。だけど俺は顔に出さない。出さないようにしている。…と、いうことにもは気づいているのだろう。それが腑に落ちないけれど、とにかく、内心とは裏腹に俺はからかうようにへらりと笑った。 「ふーん。昨夜はずいぶんお楽しみだったよーで」 「ふふ、茶化さないでよ。のろけるよ?」 「うっげ、聞きたくね〜」 あーマジで話したそうにしてんなよ。頬染めてニヤニヤとかしてんじゃねーよ。あーむかむかする。こういうとき、本当にコイツの正気を疑う。明らかに俺に話す話題じゃないだろう。っていうか誰にでもそんなデレデレした顔してノロケ話してんだろうか。うっわどんびき。吐きそう。吐かねーけど。吐き気はない。ただただ、嫌悪感だけがこみあげる。俺はの纏っていた下着を乱暴に剥ぎとって、肉の割れ目に指を這わせた。ちょうどそのとき、上機嫌な声が降ってくる。「昨日ね、黒くて、真ん中に可愛いリボンがついてるブラジャー着けてたの。可愛かったなあ。ううん、セクシーだったなーってかんじ?」またもやこみあげてくる嫌悪感。なんで俺はこんなヤツを抱いてるんだろうと本気で思う。俺はフーンと気のない返事をして、二本の指をのナカに突き立てる。そうしながら、胸の先っぽを舌で転がした。程なくして漏れだす喘ぎ声に、すこしだけ俺の機嫌は直る。はは、笑える。ちょろすぎ。俺が?いや、俺だけじゃなく、コイツも。(昨日の下着の色とか超興味ねーし)(俺に報告する意味)そう、昨日、黒のカワイイ下着をつけていたのはじゃない。じゃなくて。 「つーか、女同士のセックスってどうやんの?」 「…ン、ふ…なに、知りたいの?」 「あーやっぱいいや。想像しちまいそうだし?」 「っはは!ねえ、なに怒ってんの。和成」 「べつに怒ってねーっつの」 「怒ってんじゃん。何?浮気じゃないでしょ。孕ませられる心配も無いし。ちんこ突っ込まれるわけでもないし」 本日二度目の舌打ち。いや、一回目は胸の中だけで留まることが出来たんだけど、今回はダメだった。忌々しげに自分の口から漏れた舌打ちに、一瞬ハッとするけど、すぐにどうでもよくなった。がくしゃくしゃと俺の髪を撫でる。かわいいところもあるんだねかずなり、おんなのこあいてにやきもちかあ。どこか遠いもののように、その声を聞き流した。苛つく。今まで付き合ってきた女の中で間違いなく最悪の相手になるであろうは、所謂バイセクシャルというやつらしい。「セフレがいる」といきなりカミングアウトされたときは頭が真っ白になってもう少しで引っ叩くところだったが、「安心して。相手は女だから」と悪びれもせずむしろ笑って俺に言ったときは、正直怒りも呆れも通り越して軽く寒気がした。そりゃあ確かに、相手が男だったら、俺はまた違った反応をしていただろう。違った気持ちを抱いていただろう。けど、相手は女。の言い分としては、「相手が男じゃないなら浮気に入らない」らしい。何故か?「男では和成が一番好き、和成だけが好き」らしいからだ。…俺は本当にちょろい男のようで、のこの一言で簡単に納得できてしまったのだ。許容してしまった。受け入れてしまった。我ながら、馬鹿だと思う。(結局こんなに、いらついてんのに)(やきもちとかじゃなくて、なんか、単純にこう、)(女が女を好きで、やることやって、肉体関係を持ってる。それが、気持ち悪い、のだと思う)偏見?差別?なんとでも言え。自分の彼女がそうだっていうことがたまらなく気分悪いんだ。(なら別れればいーのにな!ほんとそう) 「…俺とヤるのと彼女とヤるの、どっちが好き?」 「えー…気持ちいいのは女同士かなあ」 「うっわ、ムカつくなー」 こうやって自分の首を締めていく。俺はそこで話題を断ち切るつもりだったのに、はまだ上機嫌に「彼女」を語る。女同士の何がいいのかとか、どうするのが気持ちいいだとか、べらべらとべらべらと。俺はまた舌打ちしたい気分になって、誤魔化すように自身の昂ぶりを秘部にずぶずぶと挿入していく。そこでの話は中断されて、俺への抗議が始まった。いいじゃん適当に慣らしたし。そう言ったら、「だから女同士のほうが気持ちいいのよ」って機嫌悪く呟かれた。これだから男とヤるのは…。そう言いたげに。ぷつりと俺の中の何かが切れる音がした。昂ぶりをぎりぎりまで引き抜いて、一気に突き上げる。それだけで、あられもない嬌声が部屋に響いた。が何かを俺に伝えようとする。また抗議の声かもしれない。また「彼女」の話かもしれない。わざといつもより激しく腰を動かすと、はその動きに合わせた喘ぎ声しか喋らなくなった。それでいい。これでいいのに。俺とのセックスでこんなにもあんあん喘ぐくせに。ちんこで突かれて気持ちいいくせに。満たされないこの虚無感は、どうしたら埋まるんだろう。いっそ妊娠でもさせてやろうか。―そうして今日も、俺の精子はゴムの中で死んでいく。(セフレは、どっちだよ) 「今度、その子誘って3Pでもする?」 「あはは、和成のそういうとこ、好きだよ」 ああそう、あの子とのセックスより好き? 間接的な憎悪の 短絡的な発露 |