「マミが死んじゃう夢を見たよ」

毎朝一緒に学校へ行くが、私のマンションに押しかけてきた。いつも私のほうがの家へ迎えに行くのに、その日、彼女は朝早くに私の部屋のインターホンを鳴らした。それはもう、しつこく鳴らした。ただ事じゃないと思った私は、慌てて起きて、ドアを開ける。扉が開くなり飛び込むように部屋へ上がりこんだは、切羽詰ったように私の名前を叫び、びっくりしている私の姿を上から下まで素早く確認すると、そのままぎゅっと抱きしめてくる。そうして、冒頭のセリフを言った。当然だけれど、困惑した。

「…えっと…?」
「もう怖くて怖くて、どうしようって思って、走って来たの」
「…それだけのために?私のことを、心配して?」

突然のことでまったく整理はつかないけれど、ただ、すごく嬉しいことだというのは分かる。よく見たらはパジャマ姿にサンダルで、上着も羽織らずに、家からここまで走ってきたようで。思わず「おばかさんねぇ」と苦笑いしたけれど、正確には、私はにやにやしていたかもしれない。ぎゅっと抱きついて離れないの頭を、よしよしと撫でる。同い年なのになんだか妹のようで可愛い。

「また魔女退治のことを心配してくれたの?」
「…うん」
「そう…、心配しなくっていいのよ。一人でやってるわけじゃないわ。暁美さんも佐倉さんもいるし」
「うん」
「……?」
「うん、うん」
「…泣いてるの?」

最後の「うん」は、小さくてうまく聞き取れなかった。ぎゅうっと抱きしめられて、顔は見えない。だけど、彼女の肩が揺れて、私の耳元で小さな泣き声が聞こえる。私は、なんだか胸がきゅっと切なくなって。抱きしめ返して、無理やりに笑おうとしたら、なんだか上手くできなかった。

「ほんと、おばかさんねぇ…」
「だって…だって!」
「死ぬわけないじゃない、私が、を置いて」
「…でも…」
「死ぬわけ、ないのよ…」
「マミ…?」

泣いてるの?

言われて、初めて気付いた。声が震えて、唇が震えて、うまく動かない。何も言わずに首を振った。もしばらく何も言わなかったけれど、やがてますます泣き出した。私も追いかけるように声を出して泣いた。なんで、どうしてこんなに悲しいのかな。悲しい夢を見たわけでもない。の涙にもらい泣き、…というのも、なんだか少し、違う。違う自分が、心のどこかで泣いてるみたいに。自分のことなんだけれど、自分じゃなくて。何か大事なことを忘れてしまっているような、もっと、ここじゃないどこかで、のことを悲しませているような。とても怖い思いをした気がする。分からない、分からないけれど。の夢の中の私は、こんな気持ちを味わったのかもしれない。どっと寂しさやら恐怖があふれてくる。どうしてかな、どうしてだろう。

「マミ、私、パジャマだ」
「うん…そうね、一度帰って、制服取ってこなくちゃ」
「…ねえマミ、今日はお休みしない?」
「サボるの?」
「うん。それで、二人でケーキ作って、お茶会するの」

そうしたら、私の夢の中のマミが、少し、救われるかもしれない。ぽつりと呟いて、そこでようやく私を腕からはなして。顔を合わせる。「なんだかごめんね、勝手に夢の中でころしちゃって、騒いで。気分わるいよね?」と真っ赤になった目で私に尋ねた。私はふるふる首を横に振って、「そんなことないわ」と答える。本当に、そんなことないの。だって、嬉しい。なんだかすごく、幸せだった。

「お茶会、しよっか」



愛として埋葬

(どこかの世界で救えなかったあなたへ、花束を) Don't forget. someone is fighting for you.