「倫理くんの生まれた日も、きっとこんなふうに寒かったんだろうねえ」

 のんびりとした声でそう言った彼女が、ボクの手を両手で包む。お互い、寒い寒いって言いながら、手袋をしていなかった。「誕生日プレゼント、手袋にすればよかった」とも言って笑っていた。ボクの手に、はーっと息を吹きかけて。ああ、そんな一昔前のドラマみたいなことするひとなんだなあって、見てるこっちはちょっと恥ずかしい気持ちになるよ。キミは恥ずかしくないんだろうな。「倫理くんが冬生まれって、意外のような納得のような、微妙な感じだね」なんてことも言う。ずるい言い方だな、それ。結局意外なのか納得なのかどっちなのさ。どっちでもあるっていうのは、どっちでもないってことでしょ。ずるいな。

「こうやって誰かにあっためてもらうために、冬に生まれたのかもしれないね、倫理くんは」

 ボクの手をかわらず握りながら、そんなこと言う。誰かって、誰だよ。誰でもいいみたいに言うんだから。「ボクはキミにあっためてもらうために生まれてきたんだよ」とか、言うべき?なんか変じゃない?ボクごときがそんなせりふ。でも、誕生日だもんな、ボク。誕生日だから、さむすぎる「生まれた意味」とか、口にしちゃってもいいのかな。言いかけて、彼女が先に口を開く。「私は倫理くんをあっためるために生まれてきたのかもしれない…」……言うのボクじゃなくてそっちかよ。ほんと敵わないや。呆れるボクを不思議そうにのぞき込むその顔に笑う。バカだね、ボクごときのために生まれてきちゃったキミ。じゃあボクの誕生日でありキミの生まれるきっかけの日ってことで、ふたり分の誕生日だ。さっさと帰ってケーキ食べよう。おたんじょうびおめでとうプレートはボクがもらおうと思ってたけど、綺麗に真っ二つに割れたらそのときは、キミに半分あげるから。//つめたい手に握らせた幸福//201209