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「お前、俺の顔見るたびそのツラすんのやめろよ」 「え…どんな顔してました?」 そう言いながら、今は矢後さん、ちっとも私の方を見ていない。退屈そうにあくびをして、寝る体勢に入る。机に突っ伏して、顔が見えなくなって、私はその顔が見えないことにちょっと心臓がドキリとした。じっと彼の肩や頭を凝視する。少しでも動けば…息をしていることがわかれば、安心するから。考えていたら、私の望んだとおり、矢後さんがもぞもぞ動いた。ほっと胸を撫でおろす私の方を、今度こそ矢後さんは見ていた。 「それだ。それやめろって言ってんだよ…めんどくせぇ」 「えぇ…」 「『あー生きてた』って顔」 私は、なんにも言えなくなる。やめろって言われたって、無意識だ。いつも、どきりとする。眠る彼を見て、もうこのまま目を覚まさなかったらどうしようって思う。約束の時間に姿が無いと、まあただの遅刻だって言い聞かせながらも、心臓がばくばくして嫌な想像ばかりしてしまう。けど、なんてことないように当たり前に目の前に現れて、あくびして、息をしている彼に、ばかみたいにほっとする。ただそれだけで、本当、ばかみたいに。 「だって、矢後さん」 「…んだよ」 「ごめん。私ね、何回も想像しちゃう」 「……しょーもな」 「私、想像の中で何回矢後さんを殺しただろう」 「は…言い方わりーな」 「死ぬ想像しちまう、って言えよ。誰がてめーに殺されるかっつーの」軽く笑い飛ばす。彼の強さはわかっている。わかってるのにな。なんでだろうな。いつだって不安だな。眉を下げて苦々しく笑う。鏡は無いけど、矢後さんが私を見て顔を顰めたから、きっと情けない表情をしているんだろう。彼はまた目を逸らす。また眠ろうとする。その眠りは永遠じゃない。わかってる。まだ、また、きっと、大丈夫。矢後さんが小さく何か呟いた。気だるげで、眠たげで、よく聞き取れない。でも、「俺もだ」って、言ってた気がする。 「想像の中で、お前を何回泣かせたんだろうな」 |