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物騒なニュースばかりで不安だと言うと、一樹は一瞬キョトンとした後、からから笑いだした。 「心配症だなぁ、お前は。大丈夫だ。なんにも起こらないよ」 「なんでそう言い切れるの?」 「なんでも何も、俺が言うんだから間違いないだろ?俺が白と言えばカラスだって白だ」 「…そうでした」 「そうですとも。さ!さっさと寝ろ寝ろ!」 枕に肘ついてにやにや私を見守る一樹の顔を、ちょっと納得いってない顔で睨んでから、布団にもぞもぞもぐる。一樹はいつだって強引だ。ちょっと俺様入ってる。ぜんぜん嫌な俺様じゃないけど。無理矢理で、横暴で、なのに不思議とみんな一樹に引っ張られてしまう。説得力があって、率先力があって、なんだかすごい人なのだ、この人は。一樹が言うなら、と信じてしまいたくなる。なんだって。今もそうだ。この、どんな困難も吹き飛ばしてしまいそうな不敵な笑顔を見ていると、妙に安心する。一樹が言うなら、そうなのか。なんにも起こらないのか。そうか。 「一樹なら、なんだってやっつけちゃいそうだもんね」 「ん?ああもちろん。ゴジラでもウルトラマンでもなんでも来いだ」 「いやそれべつに敵じゃないんだけど…まあでも、そうだね、ヒーローが似合うね」 「…おう。そう正直に言われるとちょっと照れるな」 「もしかして私の知らないところで地球救ってる?」 「ははっ、バレたか。みんなには内緒だぞ」 「いわないよ」 「そりゃあ助かる」 いわないから、じゃあ、これからも引き続き救ってください。声に出そうか迷って、結局言わずに胸の中だけで唱えた。目を閉じたら、一樹の優しい手のひらが私の頭を撫でる。わかっているよ、一樹。あなたが、本当に、私たちの気づかない些細なところでも、助けてくれているってことは。人が困っているのをすぐに気付けてしまうあなただから。でもそれだけじゃないな、もう一つ、わかってるよ。一樹はべつになんの変身能力も持たない、ただの一人の人間だってこと。ヒーローだって言われたら信じちゃいそうで、忘れがちだけど、わかっているよ。その手で届く範囲の誰かのことは助けられても、世界を救うことは出来ないって知ってるよ。だけどそれでいいんだ。それがいいんだ。優しすぎるあなたが傷つかないで済むには、それくらいがいい。 「…なんにも怖いことなんてないよ。大丈夫だ。おやすみ」 救ってくれているんだって思わせてくれてありがとう。優しい嘘をついてくれてありがとう。 消えない嘘 |