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「女同士のセックスってどうやってするのかな」 恐らく大抵の人間を三秒でドン引きさせられるような質問を目の前の男にしてみると、その人物は一瞬キョトンとした表情を作った後、ぱっと満面の笑みになった。「なあに、ちゃん。楽しそうなこと企んでるね」至って真面目な声音で質問した私に比べれば、遥かにライトの方が楽しそうな表情をしている。いや、もう本当に、いい遊びを見つけたみたいにご機嫌だ。べつにアンタを喜ばせようと思って言ったわけじゃないんだけど。 「んー、なんか私、女の子もイケそうだなって思ったんだよね。あの子見てると」 「なるほどねぇ…キミまでたぶらかしちゃうなんて、やっぱりあの子はいけない子だね。『ビッチちゃん』って名前、ピッタリじゃない?…ああでも、こうしてボクをいやらしく誘ってくるキミも十分ビッチちゃんだけど」 「えぇ?いつもノッてくるのはそっちじゃない?」 「んふ。よく言うよ」 小さく笑って、肌蹴たシャツの間に手を滑り込ませ、ブラジャーをずらして胸を触ってきた。手つきは意外に優しくて、その柔らかさを確かめるように揉まれる。「それに、もし女同士が気持ち良かったら、もう男とは出来なくなるかも。ライトとするのも今日が最後かもよ」からかうように言ったら、私の胸元から顔を上げたライトが、わざとらしく口を尖らせる。「妬けちゃうなあ」だって。嘘くさい。焦らすように指先で乳首の周りをなぞって、芯を持ち始めたらそれをきゅうっと摘まむ。身を捩らせた私を見て微かに鼻で笑い、執拗に先っぽだけを擦り始める。以前、ライトって乳首弄るの好きだよねって言ったら、ボクじゃなくてちゃんが弄られるの好きなんでしょって言われたっけな。自分じゃそんな風には思ってなかったけど、たしかに今、あっという間に自分の息が上がっていることに気付いたから、言い訳は出来ないのかもしれない。ライトが私の胸元に顔をうずめて、今度は舌で先端を舐め上げる。びく、と肩が跳ねたのを、ライトが視線だけで笑う。ぞくぞくと体は興奮していく一方なのに、頭はどこか冷静だった。彼の愛撫を受け入れながら、最近私がお気に入りの女の子が、ふと脳裏に浮かぶ。元々ライトに紹介されて知り合った同い年の女の子だ。聞けば、あの逆巻家に一緒に住んでるっていうし。あんな兄弟に囲まれてさぞ苦労しているんだろうと同情していたら、「いろんなことに巻き込まれて不安だらけだけど、ちゃんとお友達になれて嬉しい。ちゃんとおしゃべりしているとすごく安心できるの」なんて、ずいぶんと可愛いことを言ってきた。その時まあ見事にキュンの矢が刺さったわけなので、それ以来あの子にムラムラしてしょうがないんだけど。そう、むらむらするだけ。理由なんてそんなもん。ライトとこういう関係を続けてる理由もそんなもん。周囲の女の子よりちょーっと、気持ち良いこと好きなだけ。自分の欲望に忠実なだけ。女の子とシたら、どれくらい気持ち良いんだろうな。自分がされて気持ち良いみたいに、あの子の胸を優しく揉んで、先っぽを舐め回したら、可愛いあの子は気持ち良くなってくれるのかな。どんな声で啼くのかな。 「ねーぇ、ちゃん。キミが同性との行為を想像して興奮できる変態なのは十分わかってるけどさ」 「ん…」 「ボクとしてる時は、ボクを通して誰かと気持ち良くなるの、やめてくれない?」 想像を口にした覚えはないのに、こういう時ライトはいやに鋭い。眉を寄せて、むっとした顔をしている彼を見て、あら何か地雷を踏んだだろうか、と少し申し訳なくなる。「ごめん、べつにそんなつもりないよ。ライトだから気持ち良いんだよ」なんて、そんな言葉で誤魔化されてはくれない気がしたけれど、それ以上彼は怒らずに、小さく溜息を吐くだけだった。「だいたいさ、ちゃん」止めていた手を、今度は私の太ももに滑らせる。面倒なんだか趣味なんだか、スカートは脱がせてくれないので、さり気なく少し自分でそれを捲し上げた。 「男とするの大好きな淫乱なんだから、女同士じゃ満足できないかもよ。キミの気持ち良いところに、挿れてもらえないしね」 「それは…いい、よ。あの子の喘いでるとこ見て…興奮したいだけだし…んっ」 「ふふ…それでキミが満足できるとは到底思えないけど」 話しながらも、下着の上から敏感な箇所を指の腹で擦ってくる。下着に染みができるから、この触られ方はすきじゃないんだけど。直接触ってほしいんだけど。でもライトはこうやって下着越しに攻めるのが好きらしい。今に言葉でも攻めてくるだろう。直接触ってほしい、と私が言えば、それはそれで喜ぶだろうし。 「ねえ、やっぱり…キミがあの子としたくなった時はさ、ボクも混ぜてよ。きっと楽しいと思わない?」 耳元へ唇を寄せたと思うと、そんなことを囁いてくる。三人で気持ちよくなろう、一緒にイこうよ。三人で。脳内に広がった淫らな妄想に、ぞくぞくと腰が震えた。ライトがすぅっと目を細めて、私を見た、そのとき。空き教室の入り口の方から、ガタン、と音がした。私とライトが同時に視線を向けて、そこに立っていた人物に二人で目を丸くする。 「…あ…っ!あの、ごめんなさい、物音が聞こえて、気になって…その、二人が、いる…なんて…」 耳まで真っ赤になったあの子が、すっかり慌てて手をぱたぱた振って否定を表していた。空き教室から人の気配がして、気になって覗いたら、見知った友人同士のこんな光景が広がっていたわけだから、恥ずかしさで目を逸らしたくなるのも分かる。きっと彼女の頭の中では、ライトくんとちゃんって付き合ってたのか、そんな仲だったのか、知らなかった、なんて、そんな言葉が行き交っているだろう。私とライトは数秒ぽかんとしていたけれど、気付いた時にはお互いに顔を見合わせて、にやりと意地悪な表情になる相手を最高に頼もしく感じていた。頭を下げて、部屋の扉を閉めようとした彼女に、私達は手招きする。きっと楽しい。きっと、彼女も気に入るだろう。これから起こる事を想像して、胸が大きく高鳴る。きっと、それは私だけじゃなかった。 「ねぇ、キミもおいでよ」 僕の私の 狂犯者さん |