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「オレはアクセがいいと思う。が付けてるのいつも可愛いじゃん。そういうの集めるの好きな子相手に似合うもの考えるの、選ぶ方も燃えるでしょ」 「わあ〜!うん、きっと喜んでくれるよ!…ハッ!でもでも、こだわりがある人相手だからこそ、あんまり気に入らないものを渡しちゃったら…!ううん、きっと優しいから顔には出さないと思うんだけど、でも気を遣わせちゃってもしその…」 「むっくん、心配しすぎだって〜!こっちにはゆっき〜がいるんだから、好みとかセンス的な問題は楽々クリアでしょ!」 「オレはね〜、サンカクがいいと思う〜!」 「お、いいじゃんいいじゃん!サンカクのヘアアクセとか女の子よく付けてるの見るし」 「サンカク星人はなんでもサンカクがいいだけじゃん…で、他の案だけど…」 「あ…ボ、ボクのはその…ぬいぐるみっていう案なんだけど…子供っぽいかな。やっぱり実用性があるものじゃないとダメだよねごめんなさい」 「そんなことないと思うな〜。、ベッドにいっぱいぬいぐるみいるって言ってたからきっと喜ぶよ〜、むく!」 「実用性気になるならさ、ぬいぐるみっぽく見えてポーチになるとかリュックになるとか、そういうの探してみるのとかは?カワイイのいっぱいあるじゃん?」 「ふうん、そういうのもアリかな。いいんじゃない?持ってるとこ想像したら可愛いし」 「えへ…そっか、うん!ありがとう!言ってみて良かったぁ」 「はいはーい、次はオレね!題して〜『と行くインステ映えスイーツ巡りツアー』!」 「スイーツ巡り…!わあ〜!すっごく素敵だよ!」 「インステやってなくない?」 「これを機に始めるかもしんないじゃん!見て見て、人気スイーツ店超リサーチしちゃった!」 「サンカクスイーツあるかな〜!」 「だからサンカク星人はサンカクから離れて」 「すみーは何か良い案浮かんだ?」 「えっとねー、オレはやっぱりサンカクがいいと思う!さんかくおにぎりを作る会を開く!」 「全然離れてないし…」 「サンドウィッチでも良いかな〜!」 「好きな具材とか聞いておかないと…!」 「楽しそ〜!…あ、でもオレとすみーの案は、プレゼントって感じの形に残るものじゃないか〜…」 「う〜ん…形に残るさんかく…」 「…っていう会議があったわけ」 「なん…っでオレがいない日に会議するんだよ!?」 「だって〜テンテン急に仕事入っちゃったじゃん?」 「だからって!別の日に振り替えるとか…」 「誕生日当日まで時間無いし。出席しなかった奴が悪い」 「ぐっ…け、けど事前にプレゼントの案は出してただろ!オレの意見も取り入れ」 「ミニ盆栽?」 「敬老の日にあげたら?」 「バカにしてるだろ!!?今は手軽に育てられるものも多く売っててだな」 なんでどいつもこいつも良さが分からないんだよ!紬さんに言ったら絶対賛成してくれるはずだ。こいつらとプレゼント選ぶなんて言い出さなきゃよかった。いや、べつにオレが言い出したわけじゃない。オレはべつに、一人でプレゼントを考えても良かったんだ。オレ一人でもの喜ぶプレゼントを選ぶなんて簡単だ。なんたってこのオレが選ぶんだからな。他の奴らもの誕生日プレゼント考えたいとか言うから、仕方なくだ。そこまで言うならまあお前らの意見も聞いて用意してもいい、って。 「絶対オレたちの手借りなかったら、今頃まだ部屋で唸りながら雑誌とスマホで『誕生日 プレゼント 女子』とか検索かけて先に進んでなかったから」 「検索して悩んだ結果が安定のミニ盆栽だったんだね〜、テンテン」 「う、うるさい!!べつにいいだろ!!」 「でも、悩んじゃうよね。だってやっぱり喜んでほしいから。相手のこと想って真剣に悩んでる天馬くんの姿見て、ボク達、ちょっとでも力になりたいなって思ったんだ。…め、迷惑だったかな?やっぱりこういうのって一人で選びたいものだしもし迷惑だったらそのっ他のみんなは悪くなくてボクがお節介で図々しく…」 「てんま〜!このさんかく、プレゼントにどうかな〜!」 「わかったわかった!!一緒に選べばいいんだろ!」 広いショッピングモールの中でがやがやと男五人で買い物。女物の並ぶ店にも微妙に入りやすいのは幸の存在のせいか。それでもオレは一応サングラスで人の目を気にして歩く。確かにオレのスケジュールが合う日は今日しかないし、ぐだぐだ悩んでる暇はない。なんとしても今日のうちにプレゼント選びを済ませなくちゃいけない。の誕生日は次の土曜日だ。オレの独断でミニ盆栽を贈ってもいいが、そうしたところで幸あたりにくどくど「センスない!ありえない!わかってない!」とか言われることになって面倒だろう。だいたい、なんだよ「わかってない」って。オレがのことを分かってないわけがない! 「あ、この動物モチーフのすごくかわいいよ!」 「ほんとだ。へえ、クマも可愛いけど…ならこっちの猫かな」 「ウサギも良さげじゃない?、最近ウサギのイメージ強いかも〜」 「のカバン、うさぎついてるよね〜!いつも一緒におでかけしてる!」 「…ポンコツ役者が持ってるのは…パンダ?」 「パンダ。巷で人気だからな」 「シャンシャンか〜」 「オレの意見が一番流行を押さえてる」 「すごいどや顔で言ってるけどべつに。流行りじゃなくての好みをおさえてくれる?」 「こっちのほうがが普段着てる服に合うと思う」 「けどこっちのほうがラフな格好にも合わせやすいだろ」 「…あのさ、なんでラフな格好を前提に考えるわけ?がジーンズにシャツでアンタと出かけたことある?」 「そ…想像つかないね…」 「の私服いっつもキャワイイもんね〜」 「てんま〜!にはこっちとこっち、どっちのサンカクがいい?」 「あ、これハートの形もあるよ!」 「花とかリボンのもいいかも」 「テンテン的にはどれ推し〜?」 「……」 「(あ、めちゃくちゃ悩んでる)」 「(そして幸くんに駄目だしされないものを慎重に選んでる…)」 「…こっち」 「ふうん。こっち?」 「ま、待てやっぱりもう一回考える!」 「べつにダメだなんて言ってないんだけど」 「に似合う色のラッピング、どれだろう〜…あ!この色はどうかな〜」 「ぽいぽい〜!あ、こっちの薄いピンクもいいかも」 「春らしさもあって、優しい色で…迷っちゃうね!ね、どうかな天馬くん!」 「あ、ああ。いいんじゃないか」 「じゃあこれでラッピングお願いします」 「……」 「…あ、オレちょっとあっちの店見たいから、ラッピング終わったら受け取っといて。それくらい出来るよね、ポンコツでも」 なんともいえない気持ちで、包装係の店員の手に渡るプレゼントを見送る。見送ってから、自分の周囲、店内の商品棚のあちこちを見渡した。 何を贈るかをまず迷う。決めたところで、具体的にどんなものかを考える。形は?柄は?色は?迷った後に、またじゃあどんなラッピングか?とか。人に贈るものっていうのは、当然だがいろいろと考えることが多い。パッと適当に「これでいいだろ」と決められるようなものじゃないから余計にだ。好きに買える自分の買い物とは違う。その人を思って考える、とか、頭では分かっていたって、考えれば考えるほど逆に分からなくなる。一周回って、ってやつだろうか。昨日今日の付き合いじゃない。過ごした時間は確かにあるはずなのに、いざ、「の好きなものは」「似合うものは」なんて考えると、オレはのことを何も分かっていないのかもしれないと不安になる。よっぽど自分より他の人間のほうが詳しい気がして、複雑というか、不安というか、なんというか。今日のプレゼントだって結局、ほとんど幸たちが決めたようなものだった。いや、不満があるわけじゃない。「確かにに喜んでもらえそうだ」と納得のいくプレゼントだ。ただ、なんとなく、複雑だ。オレ一人で「これ!」と選んだ要素が何一つ無いというのが。のことなら分かってると勝手に自信があったのに。 「お客様ー、すみません」 「…、…え」 「先程リボンの色を確認し忘れてしまって…何色がよろしいですか?」 話しかけられたことに驚いて、慌ててサングラスをぐいっと上げた。けどべつに、「皇天馬」がどうこうという理由で話しかけられたわけじゃなかった。プレゼントのラッピングの仕上げの、リボン。何色か見本を見せてくる店員にあまり目を合わせないまま、「あー、リボン…リボンはー…」と周囲をきょろきょろ見回す。幸がいない。一成もいない。いや、全員いないぞ。いつの間にか自分が一人で店で待たされていることにそこで初めて気づく。オレがはぐれたわけじゃない。あいつらがいつのまにかいなくなっただけで。 リボンの色。ラッピングの袋自体はさっき全員で相談して決めた色だ。に合う色。だが、リボン…リボンの色は、オレ一人で決めるべきなのか?どうせなら最後の最後まで他の連中の意見を聞いたほうがいいんじゃないのか?ここで下手を打てばまた幸とかに後で小言をいわれるかもしれない。いやあいつが生意気なのは今に始まったことじゃないんだから、文句を言われるのをびびってるわけじゃない。このリボンの色ひとつでも、「のことを分かってない」と思われるのが嫌なんだ。こんなにオレは想ってるのに。 「……、…」 「お客様?」 分かってないわけがないはずだ。想うだけなら簡単すぎて、想っている自信だけに頼ってしまうけど。 「…今日、誕生日だろ」 3月17日当日を迎えても、朝から脳内はぐるぐると慌ただしかった。なんて言って渡すのか?どういうタイミングで切り出すのか?出会い頭か?別れ際か?いやどっか落ち着いて余裕が出来ていい雰囲気になってからか?とか。いやなんでこんなに悩むんだってくらいだ。かっこ悪いところを見せたくないのはもちろんだが。いやこの天馬様がそんなかっこ悪い誕生日デートプランなんてありえない。自然に、スマートに。そう言い聞かせながら、切り出した。今日会おうって話になった時点で誕生日を知っているのは当然って感じだが、こう前置きを切り出さないと、言うタイミングを逃しそうな一言がある。 「誕生日おめでとう。これ、夏組から」 目をぱちくりさせたが、オレの差し出した包みとオレの顔を見比べる。今日のの格好は、幸や一成たちがまた絶賛して騒ぎそうな可愛らしいワンピースだ。ああ確かにジーンズにシャツの姿はこの先も見ることが無さそうだな、あの時のオレの意見は確かに幸に文句を言われるよな、なんて思う。納得だ。手の中のプレゼントがより「これにしてよかったな」と思えた。けど、のそのきょとんとした顔が「夏組から?」ってとこに引っかかってるのかと思って、微妙に焦った。一人で選んだわけじゃないのか、と。 「違う、オレはべつに一人で選んでも良かったんだが、あいつらがどうしてもの誕生日を祝いたいって言うから仕方なくだな!」 「え?ふふ、そっか。嬉しいね、みんなから、って」 本当は、一成たちからは「べつに『みんなから』なんて名前出さなくてもいいよ、選ぶの手伝っただけだしさ」なんて言われたが、それはそれで個人的にもやもやする。オレ一人の手柄にしたくてあいつらに選ぶのを手伝ってもらったわけじゃないし、あいつらもの誕生日を祝いたかったから、ってのは紛れもない事実だ。のことを考えて、のために。改めて実感する。当たり前だけど、オレ一人じゃないんだな、のことを想う人間は。 「…そっか、そっか。ふふふ」 「なんだよ…」 「ううん、嬉しいなって。ほんとに」 「…プレゼント、開けないのか?」 オレの手から受け取っても、すぐに開けようとはしない。ただ本当に、嬉しそうに笑って、その包みを指で撫でる。その―…結んであるリボンを、いとおしそうに眺めて、触っていた。それに気付くと、自分の心臓が落ち着かなくなる。思わずにばれないようにきゅっと拳を握った。(…なあ、そのリボンの色、気に入ったか?っぽくなくて嫌じゃないか?)(とか、訊ねることもできやしない) 「…リボンが」 「な、なんだ!?」 「天馬くんの色だね」 「…、」 「天馬くんの色だなーって、嬉しいな、好きだなーって…思ったよ」 目を見開いたオレの前で、がとびきりの笑顔で笑った。驚いたオレがおかしくて笑ったのかもしれない。自分の台詞が照れくさくて笑ったのかもしれない。もうそんなの、どっちでもよかった。どっちでも、構ってらんなかった。ずるいだろ、オレの気も知らないで!堪えきれなくて距離を詰める。オレンジ色のリボンのついたプレゼントを大事に持ってるの手を、自分の両手を重ねて包んだ。違う、ここ、抱きしめるタイミングだったんじゃないか!?とか思った時には遅い。もう今更、なんか、抱きしめるぞ、って意気込んで抱きしめるのもできない。代わりのようにの小さな手を包む自分の手にぐっと力をこめる。 「来年は、オレ一人でが最高に喜ぶプレゼントを用意してやるんだからな!覚悟しとけよ」 「期待しとけよ、じゃないの?」 「き…期待も、だ!両方しておけよ!」 「あはは!うん、ありがとう。そのときはまた、同じ色のリボンでお願いね」 Happy Birthday and WE LOVE YOU! 大好きなりらへ! これからもきみが誰かを好きになって誰かの色に染まっていく様子を近くで遠くで眺めさせてね。 きみに愛されてる男の子はみんな幸せそうだ! |