待ち合わせ場所にはいつもが先に着く。いやオレが迷子だとかそういうんじゃない、断じてべつにそういうわけじゃないんだが。いつも先に着いたが、「何番出口だよ」「何色の看板のすぐ近くにいるよ」と事細かに教えて、やっとオレがその場に辿り着く。遠くからでものことはすぐ分かった。こんなにオレの目にすぐ入り込んでくる目印はほかにない。が視界にいれば迷子になんてならないだろう。たぶん。いや、絶対、いや、まあ、たぶん絶対だ。

 あ、って顔してオレに気付いたがこっちに近付いてくる。髪についたリボンも、柄の大きなワンピースも、いかにも女子、って感じだけど派手すぎない、「かわいらしい」という言葉にちょんと収まるようなその存在。誰が見てもかわいいだろう、とオレはいつも思う。それがべつにオレと会うから特別な格好というわけでもなく、いつもの「自分の格好」をしているだけなんだろうというのも知ってる。よく一緒に買い物しに行って「こういう服は私の身長じゃこうなっちゃうから着ない」だの「私こういう帽子は似合うって自分でも思ってる」だの、が言うたび、なるほど、と思う。はただかわいいものを身に着けているからかわいく見えるんじゃなく、がかわいく見えるものを身に着けているのがなわけだ。

「…まず最初に一ついいか、

 おはようの挨拶もそこそこに、こほんと咳払いしてからそう切り出す。え、なに?なに?と首を傾げるのにも構わず、「当日じゃなくて悪い。誕生日おめでとう」と口にする。すると、ちょっと背筋をのばすようにしてからオレをまっすぐ見て、うん、ありがとう、と言った。

「でも当日にも連絡くれたよ」
「連絡入れただけだろ。0時ぴったりなわけでもないしな」
「じゅうぶん嬉しいのに」
「あれがじゅうぶんだと思われてもオレが納得しないんだ」

 何をしたわけでもないが、威張るように胸を反らす。するとが茶化すように「さすが皇天馬くん」とパチパチ手を叩いた。むず痒いが、悪い気はしない拍手だ。

「プレゼントは最初に伝えておく。正直、これ以上は無い、っていうくらいのものだからな。宣言するぞ。オレは今年以降、同じプレゼントを贈る。返品も交換も無しだ!」

 きっぱりと告げる。がちょっと面食らったように、「う、うん?」って相槌をうつ。よっぽど自信があるんだなー、みたいな顔だが、実際に完璧な答えだと思ってるんだから当然だ。ふふん、と鼻を鳴らしたくなるくらい。話したところ、あの幸すら「はいはい、正解なんじゃない?オレ様天馬にしてみたら完璧な答え。相手がならまあアリかな」と笑って納得した答えなんだぞ。どうだ、知りたいだろ?と勿体ぶりたい気持ちにもなるが、あまり焦らすと今日一日の、話が進まない。

「プレゼントは――…このオレの、時間だ」

「……」
「…な、なんだよ、その目は」
「えっ!ううん、ええとね、それって…忙しい天馬くんが今日一日私に付き合ってくれることがプレゼント、ってことでいいのかな?」
「それもあるがそれだけじゃない。今日一日、ずっと、オレはのことを考える。プレゼントは物自体よりそれを考えて悩む時間と行為に意味があるからな」
「なるほど。『一日私のことを考えてくれる』…っていうのがプレゼント?」

 そうだ。オレはのことを思ってプレゼントを考えるから楽しくて、苦じゃなくて、だから今まで毎年続いていた。何を贈るか、物自体は二の次なわけだ。の好きなもの、喜ぶもの。のことを考える。その時間やその気持ちが、一番、オレが贈れるもの。贈りたいもの。そんでもって、逆の立場なら、オレが一番嬉しいもの。だから。

「それと、リクエストもしておく。次の『お返し』は、同じものにしてくれ。来年も再来年もな」
「『天馬くんのことを考える』?」
「ああ」
「…天馬くんは、それがいいんだ?」
「ああ。オレがそれで嬉しいんだから、も嬉しいだろ」

 当然のことだ、といわんばかりに。幸なら「うわ、オレ様」って言うとこかもしれない。けどは、きょとんとしたあと、笑った。ふふ、と肩を揺らして。

「確かに一番のプレゼントだけど、今年から…どころか、いつも貰ってると思うな」
「……」
「ね」
「…それは……」

 まあ、たしかに、そうかもしれない。三月、この時期になるといつも、のことを考えてる。いや、もっと言えばべつに三月じゃなくたって、誕生日じゃなくたって、考えてるわけだ。そう思ったら、自信満々に口にした「一番のプレゼント」も、なかなか的外れな答えだと思えてきた。さっそく自信がなくなって口元押さえて「いや、一番がそれってだけで二番と三番も用意してあるしな…そもそも今日これからのプランが…」云々言ってると、がとんとんと肩を叩いた。

「ちなみに今は?」
「…な、なにがだ?」
「私のこと考えて、何か分かった?」
「……それ、デート中いたるところで聞く気じゃないだろうな!?」
「え、だって天馬くん一日中考えとくっていうから…せっかくなら抜き打ちで定期的にきく?」

 うぐ、と言葉に詰まる。言い出したのは、自分だしな。笑うにまた、かなわない、と息を吐く。それから、改めてじぃーっとのことを頭のてっぺんから靴の先まで見つめる。ぱっと頭に浮かぶ言葉は一つだが、それを口にするか迷う。だが、がじーっとおとなしく言葉を待っているので、逃げられなくて、やっぱり口にした。観念するように、微妙に視線をずらして。

「……かわいい、と思う」
「あ、この服?でしょー、今日初めて着たの」
「そうなのか?」
「なんか嬉しいね。かわいい、って言ってくれるの。天馬くん私が聞くといつも『ふ、ふーん、い、いいんじゃないか?』って言うくらいだし…」
「そっ…そんなにいつもどもってないだろ!!変なモノマネするな!」

 あはは、と口をあけて笑うに、やっぱり怒る振りをして少し自分も笑った。ほらもういいだろいくぞ、とその手を取って、ぎゅ、と力をこめて、歩き出す。これだっていつもなかなかスマートにできない行動だが、今日はそれもプレゼントの一つにカウントされると思って、なんだってしてやる覚悟はできてる。ちら、と様子を盗み見れば、笑顔がそこにあった。よし、と嬉しい気持ちになって、同時に気合も入る。今日はとびきり幸せな一日にしてやる。落ち込んだ昨日までがかすむくらい。明日からの不安なんてなくなるくらい。幸せな一日を。そしてその一日を何度だって更新してやる。このオレにできないはずがないだろう。なんたって、お前が好きになった皇天馬なんだからな。


「ああ、そうだ。これもに渡すんだった」
「え、何これ…すごく…良い感じの箱…」
「何って…この間言ってた『埋め合わせ』だろ」
「えっ!すごい、えっ、箱が大きい…埋め合わせってあれは演技で…!」
「べつにいいだろ。の好きそうなもの選んでおいたし…」
「うわったかそう!えっ!うれしい!わ、ありがとう!!」
「お、おう…(物…しかもたべものが一番喜んでないか?)」




(その長いリボンは小指に結んであるものです)

//190317 十回目の記念日になりました。お誕生日おめでとう、大好きなおともだち。だいすきなりらへ!本当に言い足りないくらい、大好きとありがとう!きみの毎日が幸せでありますように。
//190323 加筆修正をゆるしてくれてありがとう!!!私の世界できらきらふわふわかわいくて、でも芯があってつよくて自分というものを曲げなくてかっこよくて、でも一緒にゆったりのんびりもしてくれて、大好きなおともだち。あなたがたまに誰かに何かに負けちゃう日があっても、自分が好きになれない日があっても、あなたを好きな人と、あなたの好きな人が、好きな何かが、あなたの心を守ってくれますように。10年分のI LOVE YOUと、WE LOVE YOUを!これからもどうか、あなたのことを思いながら頭を抱えてこの季節を過ごさせてください。