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今時の女子高生という生き物は僕が想像していたよりもずっとずっと厄介だ。いや、女が面倒くさい生き物だっていうのは分かっていたつもりだったけど、まだ酒も煙草も嗜めないような歳のガキのくせに、すでにきちんと「女」って生き物として出来上がっているっていうのが余計に腹立たしい。どうして女は言葉を欲しがり約束を欲しがり記念を欲しがり面倒な恋愛ごっこしたがるんだろう。 「あのさあ、僕、手繋ぐの好きじゃないって言ったろ」 なんにも言わずに僕の手に向かって伸びてきた細い指を振り払ったら、ちゃんがあんまりにも悲しそうな顔するもんだから、イライラして少し声が大きくなる。そうしたら余計に泣きそうな顔するから、イライラを通り越して頭が痛くなってきた。「なんで前に一度駄目って言ったことをまたしようとするの」自分の声は子供に言い聞かせるようでいて、ペットを躾けるようでもある。ごめんなさいも言わずに、唇をきゅっと結んで視線を足元に落としたちゃん。ぴーぴー騒がないのは正解だけど、ごめんなさいが言えないんだったらそれは不合格だ。小さく舌打ち。彼女に聞こえたかは分からない。まあ聞こえててもどうでもいい。 「手繋いでるの他人に見られたらと思うと嫌じゃないの?まあ君が嫌じゃないとしても、僕は嫌だよ。ガキの恋愛おままごとって感じで寒気がする。何のために?って思うし。君らみたいに若い子のオツキアイにはアリだとしてもさあ、それを僕に求めないでって前にも言ったじゃん。僕は大人で、君は子供なの。そういう付き合いがしたいならさあ、他を当たれって。堂島さんとこの甥っ子くんとか、ジュネスの花村くんとか、いいんじゃない?そーゆー、青春のお付き合いみたいなの。好きそうじゃない?」 子供っぽい。男女の付き合いにソレが必要なステップだと思い込んでるガキがうざい。結婚にも必要ないしもっと言えば子作りにだって必要ないじゃん手を繋ぐとか何それ母親と子供かってーの。僕はあの母親と手ェ繋いだ覚えないけど。男女の関係っていうのは必要最低限の言葉と行為だけあればいいんだ。愛だの恋だの、青臭くって敵わない。「僕の嫌がることはしない」「僕がいてほしいと思ったときにいればいい」「僕がしたいときにするだけ」そういう約束で付き合い始めたんじゃなかったっけ僕ら。 「もっと自分で気づいてくれないかな。君が僕を想ってるほど、僕は君のこと想ってないんだって」 さすがに言い過ぎたかな。泣くかな。怒りだか悲しさだか悔しさだかで唇を噛んでる女の子を見下ろしていると、彼女はもっともっと俯いて、か細い声で「ごめんなさい」をようやく口にした。だけどその声を聞いて僕は満足するどころか、胃の辺りがムカムカしてくる。もしこれが罪悪感ってやつなら、こんなに胸糞悪い物はない。ああもう、とうんざりしたように頭の後ろを掻くと、ちゃんの肩がびくりと震えた。泣いたかな。さすがに泣くかな。泣いたら怒ろうかな、許そうかな、どうしようかな。(早く泣けよ怒れないだろ許せないだろ) 「でも、私は足立さんのこと、すきです」 こんなに酷いこと言われてるっていうのにちゃんは健気にそう言って、一生懸命涙を流すまいと堪えていた。ああ、もう。あああああもうなんなの。盛大に舌打ちして、叩くくらいの勢いで彼女の頭に手のひらを乗せ、がしがしと乱暴に撫でる。イヌでも撫でるようにわしゃわしゃと。せっかくのかわいい髪型は台無しになってしまうのに、ちらりと窺い見たら彼女は頬を染めて嬉しそうに目を細めていた。ああそうあんなに酷いこと言われても頭撫でられたらチャラに出来ちゃうんだ君ってほんと都合のいい脳みそしてるね。こんなのが僕のこと好きだって言うんだから、世の中終わってるなあ。(馬鹿みたいだよ本当に) かなしいふ(た)り |