あだちさん、あだちさん、としつこくその声で呼ばれることにも随分慣れた。
 お誕生日おめでとうございます、と二月一日という日付に変わるなり言われるのも、何年目になったのか。随分慣れた。一年に一回しかないっていうのに、なんだかもうずっと、しつこいくらい言われてるような気になる。

「飽きないよねぇ、毎年毎年律儀にさあ」

 そんなちょっと捻くれたこと言っても、そいつはへらへら笑う。だって言いたいんですもん、と。

「おめでとうって言わせてくれてありがとう、足立さん」
「言わせるも何も、許可あげてないし、もらわないと言っちゃいけないってわけじゃないでしょ」
「いやあ、なんか…許可っていうか…足立さんと出逢ってなかったら、足立さんがうまれてなかったら、今日足立さんにおめでとうって言えなかったでしょう」
「そりゃあ、いないなら。存在しない奴に言うわけないでしょ」
「うん。だから。うまれてきてくれて、っていうか…うーん…いてくれて、ありがとう?」

 これであってるかな?と自分でも自信がないみたいに、首を傾げながら、彼女は言う。ちょっと面食らった。そんなこと言われるとは思わなかったから。けど、まあ、らしいといえば、らしい。特別なことじゃなくて、当たり前のことを、当たり前に思えることが、ちょうどいい関係なのかもしれない。
 とはいえ僕のほうから君に寄り添ってるつもりはないし、離れたとしても僕から追いかけるつもりはないから。僕はいたい場所に留まってるってだけ。けど、彼女にとってはそれでいいらしい。そこにいてくれて、ありがとう、らしい。馬鹿だな、単純だな。べつに愛想尽かしてくれたっていいのに。僕がここにいるってだけで、君は毎年毎年、ここに、戻ってきて、おめでとうって言ってしまうらしい。習慣?慣れだね。ほんと、慣れちゃったなあ、随分。

「たぶん、やっぱり好きなんですよね。足立さんのこと」

 ああそれは、しつこいくらい聞いているような気がした。一年に一度じゃないな。一年中、ふとしたときに、なんだかんだ。なるほど。君の「誕生日おめでとう」は、「なんだかんだ好きみたいです」って意味があるわけだ。そりゃあどうりで、一年に一回しか言われないはずなのに、毎日聞いているような気になるわけだ。それじゃあ今から僕の返すこの言葉も、「はいはいどうも、祝ってくれてありがとう」って意味になるんだろう。

「勝手に、好きでいればいいんじゃないの」