幸せまで寄り道してゆこう




ねえ赤也、今この世界で「あなたは幸せですか」と聞かれてイエスと答える人はどれくらいいるんだろう?世界に人間って何億人くらいいるんだっけかな。その人間全てが幸せだって答えるなんてこときっと絶対にないじゃない?というかさ、どれくらいの幸せを幸せって呼べるのかは人によって違うよね。価値観の違い?ってやつ?まぁ私の場合ほら、多分チョコパフェとか食わせてもらえればすぐに「今すっげー幸せ!」とか言っちゃう人間だからさ。あ、簡単なヤツだなって思ったでしょ。べつにチョコパフェ奢ってくれとか頼んでるわけじゃないからね?えーっと何まで話したっけかな。ああそうそう、幸せですかって訊いてイエスって答える人はどれくらいいると思う?

「あー…とりあえず英語が話せる外人はイエスじゃねーの?日本人はハイって答えるんじゃね」
「ああなるほど。標準語が英語のところはイエスかノーしか答えないって?日本人は英語話せないからイエスとは答えないって?」
「そうそう」
「私結構真剣な話してたよ。つーか英語ダメな赤也でもイエスくらい言えるでしょ。YesでもイエスでもハイでもOKでもいいの」
「あっそ。で、何の話?」

あーそうそう。続き話しちゃおう。さりげなく赤也のことバカにしたんだけどそこには深くツッコまないのか。えーとじゃあ、まあ続きを話すわ。だからつまり、価値観って重要だよね。幸せかどうかじゃなく、例えば「あなたは自分が不幸だと思いますか」と訊かれたとしよう。不幸の基準っていうのは、ひとによって違うんだよね。「私より不幸な人なんてたくさんいるんだから、自分は他人よりいい思いをしているつまり幸せなんだ」と感じたとしよう。でもすっげー不自由な生活をしている人も「私はこんな生活だけど、とても幸せです」って思ってるかもしれないんだよ。これってなんだかおもしろくない?何が不幸で、誰が不幸なのか全く分からないんだよ。おもしろいでしょ?まあ同様に、何が幸せで誰が幸せなのかも曖昧なんだ。すっげー不自由な生活してても幸せだって思ってる人はそれを幸せだって思ってるわけだから、その人が幸せなのかな?でも、他人から見れば幸せじゃないから幸せな人ではないのかも。

「だーっ!もう話なげーっての!!一言にまとめろよ!」
「一言は無理だね」
「じゃあ二言」

つまりね、赤也。何が言いたいのかといいますとですね、幸せか不幸せかだなんて結局は人間の自己判断なんだよ。自己満足ともいう。自己採点ともいうかも。とにかく、他人には分からないんだよね。幸せって。もちろん不幸せも。とある曲の歌詞に「目覚めた朝、息をしてるだけで幸せ」っていうフレーズがあるの。私これ聞いたとき「どんだけ前向きなんだ」とか思ったんだけどさ。これって結構当たってるのかもしれないよね。私も前向きすぎる人間になったのかな。でもそういう人間がいいよね。そういう人間ばっかりだったら世の中平和だよ。きっと毎日が幸せに満ちているよね。息をしてる限り。でもそれじゃ結局は生きてる人間だけがパラダイスなのかって思うじゃん。幸せに看取られていった人はきっと死んでからも幸せだと思う。あ、でも私はまだ生きてるわけで、しかも息をしているだけで幸せだと思えていて、さっき私はチョコパフェ食べたらスッゲー幸せになるって言ったんだからつまりそれって幸せの状態に幸せが加算されるわけで

「ストップ!飽きた」
「えー」
「あのなぁ!…今までので何分喋ってたと思うんだよ!数えてねーけど」
「おう。あともうちょいで終わりそうだから我慢して」
「ほんっとーにもうちょいなのか?」
「うん、たぶん」

はい、じゃあ最後のまとめ。今までの話で私が幸せだってことは分かったでしょ?まあ確かに多少は話が脱線してたかもしれないけど、とにかく私は今幸せだと思うことにした。じゃあ次だよ。世界で一番幸せな人って誰だと思う?あと、世界で一番不幸な人。赤也は自分が「世界で一番幸せだー」とかもしくは不幸だーとか思ったことある?まあ最初の話にちょっと戻っちゃうんだけど、世界って広いじゃない?「世界で一番」っていう言葉をつかうくらいだし、規模がデカいラッキーとかアンラッキーなわけだ。でもさ、ぶっちゃけこれも自己判断だと思うわけよ。だって「自分はあの人よりは幸せだ」とか考える基準って結構難しいじゃん?世界で何番目なのか番号振っていったらキリがないし、神様が天から見てて全体の人間達の人生を把握しつつ誰が一番かを考えてくれるとしてもそれを人間が知る術はないよね。まあでもさ、「自分はあの人より幸せだ」って思えることって結構贅沢に聞こえるでしょ。自信過剰っぽい。どこの箇所を見てそう判断できるかは分からないけど、自分より下の人間を探して優越感に浸ってしまえるのは人間の長所とも短所ともいえるね。捉えようによってはだけど。でも人間以外の生き物がそういう考えを持たないのかって訊かれたらなんともいえないね。だって人間は人間の考えしか分からないから。あ、でも人間だって他人の考えふつーに読めるわけじゃないじゃん?だから

「あー、なんか話脱線しそうじゃね?」
「あれ?そう?」
「だからさぁ、そのー…世界で一番幸せなのは誰か、って話に戻らね?」
「よし分かった」

っていうか赤也、聞き流してるように見えて聞いてるんだね。ご希望通り話を戻してあげる。世界で一番幸せな人っていうのはやっぱり自己判断でどうとでもなるんだよね。自分が「世界で一番幸せ!」って思えばその人の中で世界で一番幸せなのは自分になる。ぎゃくに、自分が世界で一番不幸だと思えばその人は世界で一番不幸になる。簡単なことだったんだね。人間ってものすごく簡単で分かりやすい生き物だね。だけど深く考えようとするから答えが出てこない。あ、私もこうやってべらべら喋ってる時点で深く考えてるのかも。まあとにかく、自己判断だ。そして私は自分が幸せだと思ってるってさっきも言ったね。これがどういう意味だか分かる?

「あ。もしかして『赤也に出会えた自分は世界一幸せです』とかそんな可愛いこと言っちゃう感じ?」
「そのようなフラグは立っておりません」
「ちぇ、つまんねーな。まぁ、それもありきたりでつまんねーけど」
「でもさぁ。私、赤也のこと好きだよ」
「知ってる」

前までスキって言ったら照れて赤くなって可愛かったのに、今じゃそんな素振りも見せないっすね赤也くん。時間の経過って恐ろしいよ。何その当然だろみたいなオーラ。ちょっとショッキングだった。あー、まあいっか。事実だし。えーとまぁとにかく、あれだよ。

「私は息をしてる。それだけで幸せ。ってとこまでは聞いてた?」
「だからちゃんと聞いてるっつの」
「よろしい。私は息をしてる。家族もいる。学校も行ってる。成績もそこそこ。顔もそこそこだと思ってる。そして友達もいる。学校でみんなと話してる。そして赤也が息をしている。赤也がいる。赤也が私の隣にいる。赤也と話してる。赤也が私の目を見て声を聞いてくれてる。話を聞いてくれる。赤也に好きって言える。そしてチョコパフェも食える。幸せに幸せが加算されて、本当に本当にすっごく幸せになってる」
「チョコパフェを最後に持ってくるあたりがオマエらしいけどよ」
「うむ。でもチョコパフェより赤也が好き」
「知ってる」

うわ、赤也またそれ言っちゃったよ。っていうか私また好きって言っちゃったじゃん。また一つ幸せが増えたじゃんか。でもあんたが嬉しそうにニヤニヤと笑ってるから、私はものすごく幸せになる。うわぁ、やばい本当に幸せいっぱいじゃん。幸せすぎじゃん。幸せ増えすぎじゃん。ね、赤也。幸せすぎって怖いっていうけど、本当だよね。うん、改めて実感。

「赤也、私ほんとうに幸せだね」
「俺、おまえのこと好きだぜ」
「うわいきなりサラリと言っちゃったよ。何の前触れもなく。でも今のでまたしあわせふえた」
「そこはおまえも『知ってる』じゃねーのかよ」

でもね、私が言いたいことは「赤也に出会えた私は世界一幸せです」っていうありがちセリフじゃないんだよ。もちろん、赤也と出会ったことは私の人生の幸せの一つだと思ってるけど。でも、出会えたことは幸せの中の一つでしかないんだ。それだけじゃ足りないの。だけど今「赤也に好きって言ってもらえた」ことも幸せの一つだね。初めて言われたわけではないのに、何度言われても幸せだと思っちゃうあたり、やっぱり私って幸せなんだなぁ。息をしてて、赤也がいて、赤也が好きで、赤也も私が好きで それだけで、幸せが溢れてこぼれちゃいそうだよ。だからね、赤也。私が一番言いたいことは、



「これからもずっとずっと赤也が隣にいてくれれば、私は毎日、世界で一番幸せな女の子になれるんだってこと」
「…ってことは、俺の横におまえがいれば 俺は毎日世界で一番幸せな男になるわけだ」
「すごいや。私たちって世界で一番幸せなカップルじゃん、赤也」
「つーか最初からそう言えっての。前振り長いんだよ」


幸せへの距離と規模と意味と、あなたを感じるための小さな寄り道。//世界で一番幸せな男の子と女の子のお話