「なんやねんいきなり」
「いや、跡部様のことを跡部様って呼ぶ女ってさ、こう…その他大勢の女たちじゃない?多分、跡部様のことを跡部様って呼ばずに、跡部様扱いせずに、普通のそこらへんにいるクラスメートみたいな扱いをする女がさ、こう、『フッ……おもしれー女』って言われるんだよね?跡部様の目に留まるんだよね」
「はいはいまた始まったぜ、の跡部語り」
「『跡部様』っていうこの呼び方を変えない限りはさ、跡部様に覚えてもらえるような女にはなれないんだと思うのよ。跡部様にとっては大量にいる雌猫どものなかの一匹でしかないってわけ。ちょっと柄が違う猫が混じっていたとしても雌猫の中の一匹だし、てか私べつにそんな目を惹く要素もないと思うし」
「そんなことあらへん自信持ちや。普通にチャームポイントやん、その普通の黒髪とか」
「ありがと侑士。普通やね」
「つーかアレじゃね?呼び方変えたいって話だろ?勝手に変えりゃいいじゃん」
「せやな。俺らに相談せんでも、答え出とるやん」
「えっでも無理じゃない?跡部様のことを呼び捨てでなんて呼べなくない?」
「いや俺ら呼んでるし。試しにちょっと言ってみそ。リピートアフタミー!あーとーべ!」
「いやちょっと本当にやめて跡部様の名前をそういう感じでたわむれにつかわないで」
「過激派すぎるやろ。どないしろっちゅーねん」
「私はべつに跡部様のことを跡部…サマって呼びたいわけじゃないの!」
「小声でサマ言ったな」
「話の流れでさえもサマを抜いて喋られへんのや、重症やんな」
「どう考えても呼べないよ!って話!」
「はあ、まあ、ほなそれはそれでもう答え出とるやん」
「これ今なんの時間だよ」
「え!?答え出てるんですか!?どう頑張っても貴様と跡部様はお近づきになれないよっていう、アンサー!?」
「いやまあ、呼び方変えない限り無理だろ!って思ってて、呼び方変えるのなんて自分には無理!って結論出てんならそうなんじゃね?」
「っていうかそもそもさあ!!無理がある!!」
「はいはいだからムリなんだって」
「跡部様と結ばれるんだったら、元から跡部様の婚約者設定とかそういうのがいいじゃん絶対そういうのがテッパンじゃんなんで私は跡部様の婚約者に生まれなかったんですか?そのアドバンテージをちょうだいよ!そういう設定でいかせてちょうだいよ!」
「あかんな、錯乱し始めとる。ここは恋愛漫画の世界ちゃうねん、目を覚ましぃや」
「私を跡部様お相手夢小説の主人公にしてくれよ……下の名前とかで呼ばせてよ……」
「跡部呼びもできねーのに下の名前で呼びたいとかメチャクチャ大きく跳ぶじゃん」
「呼べるわけないだろ!!」
「めんどくせーなコイツ!!」
「落ち着き、も岳人も。まずここは恋愛漫画でも恋愛映画でも夢小説の世界でもないねん。え?なんやねん夢小説の世界って」
「つーかなんなんだよお前はいつもいつも!暇さえあればうだうだ跡部の話聞かせやがって!俺らに跡部との仲取り持ってほしいわけ!?」
「ちがいます~~!!そういうのは望んでません~!!私みたいな人間が跡部様とお近づきになるなんて解釈違いです~~」
「くそくそっマジでめんどくせーなコイツ!!」
「まあ……アレやろ。推しのアイドルとファンの関係みたいなモンちゃう?付き合いたいわけやないけど、みたいなヤツ」
「あー……そうだね、感覚的にはそれに近いかもしれない。リア恋だけど」
「ほな付き合いたいか。どっちやねん」
「はあ……いや、うん、いつも話聞いてくれてありがとね、侑士も岳人も。なんやかんや言ったけどさ、こうして遠くから跡部様のことを見ることができるだけでも幸せものなのかも。跡部様と同じ時代同じ学校、同じ学年で同じ授業を受け、同じ世界同じ次元に同じ空気を吸い同じ」
「多い多い」
「まあつまり、たった一人の女の子って、名前とか顔とか認識されなくても、モブでも、おもしれー女でなくてもべつにいいのかも……ってこと!てかおもしれー女って跡部様のことを知らずに生きてきた女ってことでしょ?跡部様を知らない人間なんてこの世界にいるのか?要るのか?跡部様を知らないって何?価値がなさすぎるでしょ、そんな人生。あ~今日も跡部様が素敵だった!ご清聴ありがとう!よーし元気でた!帰ろーっと」
「……はあ、あっそ」
「健気やなあ」
「ケナゲかあ?」
*
「……なあ跡部さあ」
「アーン?なんだ、向日」
「って知ってるか?」
「?ああ、お前らとよくつるんでる黒髪の女子じゃねーの」
「知ってるんかい!」
「覚え方それなんかい」
