「家でゆっくりケーキ食べるのと出かけてイルミネーション見るのどっちがいい?」
「季楽の好きなほうでいいよ」
「君が決めてよ」
「どうして?」
「面倒だから」
「嫌だよ。わたし物事決めるのって苦手なの」
「知ってるよ」

だって、俺もだし。彼女が呆れたようにため息を吐くから、俺だって呆れて、目をそらした。俺たちは似た者同士だ。嫌なとこばっかり。めんどくさがりで適当なところが特に。付き合い始めるとそれがいやってほど分かる。どこへ行こうか?どこでもいい。おなかすいた?うん、まあ、でもべつに。なに食べる?なんでもいい。もう少しいる?どっちでもいいよ。そんなやりとりばっかりだ。これを聞くとまわりの人間は「いらいらしないのか」と聞くけれど、片方でなくお互いがそんな感じだから、わりといらつくことなくうまくやっている。今だっていらいらなんかしてない。少し呆れているだけだ。お互いに。というより、自分に。

「ていうか、季楽がそんな提案するのって意外だね」
「そうだね。女子から言いだしてもいいことだと思うよ」
「だって家族と過ごすのかと思ってた」
「うん。家族以外と過ごしたことないよ」
「私もだよ」
「じゃあいいんじゃないの。お互い、初めての家族と過ごさないクリスマスで」
「初めての恋人と過ごすクリスマスって言ったほうが素敵だよ」
「じゃあそれでいい」

だいたいいつもこんな感じだ。どちらでもいいよって言ったあと、片方が何か言ったら、じゃあそれにしようだとか、それでいいよって。「じゃあ」は決まり切った言葉になっている。例年通りのクリスマスとは違って、今年は自分に「彼女」という存在がある。なんだか不思議な感覚だけど、決めなくちゃいけないことがあるというのは、少し面倒だ。本当に面倒。だって


「それでどうする?出かける?家で過ごす?」
「どっちでもいいよ」
「俺だってどっちでもいいよ」

だって俺たちは分かっている。決めなくてもいいのに決めないといけないのがめんどうなんだ。どちらでもいい。どっちでも変わらないから。だってどちらでも、二人で過ごすことに変わりない。

「じゃあどっちもしよう」
「どっちも?」
「イルミネーションを見てから、家へ帰ってケーキを食べよう。逆でもいい。ケーキを食べてから、出かけよう」
「…そうね。すごくいい案だと思うよ」
「うん。すごく恋人っぽいね。俺たち」
「クリスマスってそんなものだよ」
「そうなんだ」
「知らないけど」
「俺も知らない」


世界中の幸せそうなカップルに紛れて、一組くらい俺たちみたいに適当なのがいたって罰は当たらないんだ。だって、クリスマスなんだから。