私、周りの女の子よりちょっと背が高かった。スカートよりズボンが好きだった。お人形遊びより、かけっこが好きだった。髪型も、短いのが似合うって言われたし、ずっとショートカット。気に入ってる。男の子との喧嘩だって、引かなかった。昔、桜乃のおさげを引っ張った男の子がいた。私はそれはもう怒って、そいつに向かっていった。そいつが泣いて謝るまで引かなかった。桜乃をいじめるヤツは許さない、って思った。桜乃は目尻の涙を拭って、私にありがとうって言った。笑って。

「かっこいいね、ちゃん!」



 それが今はどうだろう。桜乃も朋香も、テニス部の見えるフェンスに張り付いて、同い年の男の子に声援を送っている。時に頬を赤らめて、わあっと飛び上がって。

「さすがリョーマ様!」
「うんっ!かっこいいね、リョーマくん!」

 テニスコートに見える小さなその人物は、かっこよくって、強くって、王子様みたいなんだって。私の方が背は高いんじゃないかな。私だって、運動神経は良いし。わたしだって、私だってさ、かっこいいのに。かっこいいって言ったのに。つまんないなあ、って、足元の小石を蹴った。二人は、桜乃は、私がつまらなそうにしているのに気づかない。振り返ってくれない。放って、私はテニスコートから離れることにした。ずんずん歩いていく。遠くに歓声が聞こえる。桜乃の声が遠い。今私が振り返ったって、すぐそばに桜乃はいない。誰もいない。分かっているから振り返ることができなかった。無性にくやしくなって涙がにじむ。みじめだ。かっこわるい。こんなのそりゃあ、全然、かっこよくない。かっこいいなんて、あの子に言ってもらえない。