あれから何年経ったでしょう。



儚火



ある夜、王子様が迎えに来ました。

私を車に乗せて、綺麗な星空が見える海へ連れてゆきました。

しばらく波の音を聞いて、夜のにおいを吸い込んで、二人で黙り込んでいました。

やがて、彼は私の手を取りました。

私を真っ直ぐに見つめる彼の瞳はとても綺麗でした。

真剣な声で、顔で、彼は、やっと言える、と私に囁きました。

ほんのすこし、震えた声で言いました。緊張していたのでしょうか。泣きたかったのでしょうか。

いいえ、泣きたかったのは私です。気づくと目の前が滲んで、ぼやけて、ぽろぽろと涙が溢れました。

そんな私をぎゅっと抱きしめて、髪を撫でて、耳元で彼は、言いました。

幸せになれ。幸せになっていいんだ。

私は次々溢れる涙を拭いながら、それを言うなら、幸せにするよじゃないの、幸せになろうじゃないの、と笑いました。

そうしたら、彼は少し恥ずかしそうに、うるせえ、と返しました。

私を幸せにするのはあなたじゃなくちゃ嫌だよ、と、私は言いました。

分かってる、当たり前だ、お前を幸せにするのは俺だし、俺が幸せにするのはお前だけだと彼は言いました。


結婚しよう。彼は、私に言いました。 王子様じゃなくって、私だけの、大切な、あなた。