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何に驚いたのかって、あの夢の中と同じ状況になってしまったことだ。私と高尾くんの他に誰もいない教室。にやりと笑う高尾くんは夢のなかの彼そっくりで、いや夢のなかの彼が本物の高尾くんにそっくりなんだけど、だからつまり、私は困惑しきっていたという話です。自転車の鍵なんてさっさと諦めて帰れば良かったどうして一度教室に戻ってしまったんだろう、と後悔し後悔し、なかなか逃がしてもらえない状況に頭が痛くなった。しかも、あの時わたしが図々しくも絆創膏を渡そうとしていたことがバレてしまってもう穴があったら入りたいくらいに恥ずかしくて恥ずかしくてしにそうだった。もうとにかく謝った。ばんそーこ渡そうとしてすみませんでした、と、あとそれよりも何よりも、本人には説明できないけど内心、夢の内容を思い出してやっぱり謝っていた。「なんかもうすみませんごめんなさい」には、あんな夢を見てしまったことからの罪悪感が強い。やっぱり高尾くんの顔は見づらい。どうしたって、あの夢の内容がちらついてしまう。罪悪感でいっぱいになって、胸が苦しくなって、泣き出したくなって。だけど、機嫌良さそうに高尾くんが私のばんそうこうを受け取ってくれたとき、少しだけ ふっと気持ちが軽くなった。ほんのすこし。 なのに。 翌朝、私は目が覚めるなり声にならない叫びを上げた。 昨日と全く、同じ夢を見たのだ。 |