|
ああもう、ああもう、どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。私はその日、家に帰るまでの道でも、家に帰ってご飯を食べている時でも、お風呂に入ってるときでも、寝る前でも、高尾くんとの会話を思い出しては後悔に苛まれていた。せっかく、高尾くんは、優しいことを言ってくれたのに。私がバスケ苦手なの(なんでか分かんないけど)知ってて、バスケ教えてあげるよって言ってくれた。出来るようになったら楽しいよって言ってくれた。バスケの上手い彼に教えてもらうなんて、すごく名誉なことですごくすごく有り難いことなのに、私は全力で後ずさる自分の気持ちを無視できなかった。嫌だったし、怖かったんだ。教えてもらったのに出来ない自分が簡単に想像ついてしまって、呆れる高尾くんが目に見えていて。…だけど、優しい言葉はそれだけじゃない。私の代わりにクラスのみんなに話してくれたことだって優しいし、それに、「ゆっくりでいいんだよ」って言ってくれたじゃないか、あの人は。人の目を見て話せない私に、人と話してるとすぐいっぱいいっぱいになって焦ってしまう私に、「時間制限なんてないよ」「人の目見たって石になんかなんないよ」って笑ってくれた。なのに。なのに。 昨日に引き続き夢のなかに現れた彼は、私に笑っていた。にやり、ではなくて、私に「いいこと」を教えてくれたときのように、もっと優しい表情。そして、私を悩ませて三度目になるキスも、いつもとは少し違う。唇を重ねるというよりも、ほんの一瞬、ちゅっと可愛らしい音を立てるだけ。きょとんとした顔で見ている私に、高尾くんはへらりと笑って、いつもように「さん」と私を呼ぶ。 目が覚めた瞬間、ひどく泣きたくなった。現実の高尾くんにあんなことを言って彼の優しさを拒絶したくせに、またこんな夢を見るなんて、私はどこまで図々しいんだろう。最低だ。学校に行くのが億劫だった。昨日もおとといも億劫だったけれど、いつにもまして。今日から彼はどんな目で私を見るだろう。そんなことを考える自分も馬鹿らしい。最初から私は、高尾くんの視界になんか、入ってないし、入っていいような人間でもないし、優しさをもらっていいような人間じゃない。私は道端の石ころで十分なんだ。見えないところまで蹴っ飛ばしてくれたって、それが当たり前なんだから。 |