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「はぁー…なるほどねぇ。めっちゃ女子だわ。男じゃ来ねえわ」 「そ、そうだよね…いづらい…?外で待ってる…?でも高尾くんのお買い物だし私じゃ…これっていうものが分かっていれば私が代わりにお買い物させていただくんだけど…」 「あ〜、いやいや。いいんだけどさ、そこは!」 べつにヤバイ居心地悪い早く出たい!っていうわけじゃなく、なるほど男にはあんまり縁のない店だなあーと、店内見渡して実感しただけ。ずらっと目の前に並んでいる「おんなのこ」な商品に、俺はうんうん頷く。カチューシャ、ヘアピン、ヘアゴム、だけじゃなくなんかいろいろ髪に付けるものであろう見慣れない物体を俺は適当に手にとって眺め、戻し、また別のものに手を伸ばす。なにこれかんざし?ちげえか。ああでもこっちのは挟めるようになってる。挟むのか。どうやって使うんだ?かわいーの?顎に手を当ててふうむと唸って、ディスプレーされた物を端から順に見ていく。そんな俺の横を、ひょこひょこお付きの人みたいにくっついてくるサン。 「サンはよく来んの?こーゆーとこ」 「う、うん…友達の誕生日プレゼントとかも、ここで見たりするかな…」 「へ〜」 ヘアアクセ以外にも、腕時計やらハンカチやらポーチやら鞄やら、いろいろ並んでる。あっちには指輪やらピアスやらネックレスも。わりと広い敷地の店内に、小さい物がずらっとたくさん展示されてて、初めて来た人間としてはいろいろ見て回れる。まあ、どれも自分が使うもんじゃないけど。 「お、これなんだろ。…あ、猫か!すげー、これ猫の形だ」 「ほんとだ!可愛いね!隣のうさぎも可愛い!」 「かわいーわ、これ。さんに、」 「…え?」 「……んにゃ、なんでも」 さんに似合うのはこっちのピンクだと思うよ、とか、口が滑りそうになってすんでのところで堪えた。微妙に堪えられてないけど、それでも全文は口にしなかったんだからセーフだ。いや、恥ずかしいだろ、なにもんだよ、お前はさんのなんなんだよ!って自分でもツッコミたくなる。あぶねーあぶねーって口を押さえる俺を見てはてなマークを頭上に浮かべて「えっえっ」っておろおろしてるさん。気を取り直して、というか、誤魔化すように、反対側の棚へ俺はすーっと移動した。 「なーサン。これどうやって使うの」 「へっ?あ、これは、えっと、ここの留め具がパチンってなるから、うんと、結び目に留めてみたり、とか…」 「へ〜、じゃあこっちは?」 「えっ!えっと、これはふつうのクリップとおんなじ感じでこう…」 とりあえず手当たり次第に目についたものをサンに「これなに?」って聞いて場を保たせる。俺が質問すると律儀に解説してくれるのでふんふん頷いて聞いた。誤魔化すために話を振ったはずが、解説を聞いている内に本当に「そうなのか!」と思う点もちょこちょこあったので相槌も自然と大きくなる。これを使うとこんな髪型になる、みたいなイメージ図が頭の中で全部先生による実演になるんだけど、それは、まあ、説明してくれてるのがサンなんだから仕方ない。たぶん、仕方ない。自然なことだ。頭の中でサンの髪型をころころ変えるのを勝手に楽しんでいると、高尾くん、って小さく名前を呼ばれた。ハッと顔をそちらに向ければ、当たり前だけど見慣れた髪型のさんがいて、俺をじぃっと見上げている。あれ、俺変な顔とかしてなかっただろうか。にやけてたりして。ちょっと不安になりつつもなんてことないように「ん?」って短く訊くと、サンが「ええと、その」って居心地悪そうにもじもじする。 「なんだか、私の趣味のお店に連れて来てしまったので…その…よかったんでしょうか」 「へ?そりゃもちろん、全然いいっしょ。一緒に付き合ってくれて超助かってるし」 「でも、ほら…どんなものが好きとか、分からないので…」 「や、でもアイツもこういうかわいーの好きそうだし。サンに聞いて正解だったと思うぜ。ってか、わりとサンと趣味合いそう」 「…そう、ですか」 からりと笑う俺とは対照的に、さんの表情はあまり明るくない。俺の言葉にほっとするどころか、表情に少しずつ影が差す。あとさっきまで敬語無しで喋ってくれてたのに、敬語になってる。当たり前だけど敬語じゃない時のほうが多分俺に心を許してくれてる時だと思うし、こうやって敬語で突き通すときは大抵俺と距離を取ろうとするときとか、肩に力入ってるとき、だと思う。経験上の勝手な俺の分析。 「…サンさ、もしかして」 「はっ、はい!?なんでもないですよ!全然!ほんと!」 「……んー…そっか?まあ、うん、なんでもないならいっか」 もしかして、今日のこのプレゼント選びあんま乗り気じゃない?とか、聞こうと思ったけど、そう尋ねたところでこの子のことだから、大きく首を横に振るんだろう。でも本当、浮かない顔をしてるのは事実だ。さっきみたいに何か手にとって、これかわいーよとか話振ってちょっとでもテンションを上げてもらうべきか、いや、でも付きあわせてんの俺だしな。なんかちょっと申し訳ないか。付きあわせたお詫びして、埋め合わせするんだったら、俺の用事終わらせたあとの方がいい。 「よし!んじゃー、さっさと選んでこの後…」 「えっ!だ、だめ!」 「…へ?」 「選ぶの、急いだり適当にしたりしちゃだめだと思うよ…!私のことはいいから、じっくり考えてあげてください!…せっかくのプレゼントだから……も、もちろん、高尾くんが選んでくれたなら、きっとなんだって喜んでくれると思うけど…」 「……さん…」 「あ、気が散るようだったら私、離れてるよ!ほんと、ゆっくり選んでください!私はいないものだと思って!さっきみたいに『これ何に使うの?』とか簡単な質問だったら答えられるから困ったら呼んでください!ではまたあとで!」 「え、ちょっ」 待ってそんなに、…そんなに!?いや俺妹ちゃん大好きだしそりゃ喜んでもらえるプレゼントあげたいけど、適当に選べばいいやとかすげえ兄貴失格なこと考えたけど、でも、さん、そんなに?そんなに、厳重な感じ?俺に気ぃ遣ってくれんのはいいけど、そんな、距離とってまで!?俺から逃げるようにその場を離れたサンは、ヘアピンやヘアゴムの並んだテーブルの方へ移動してしまった。…なんだ?なんかマジで、すこし、噛み合ってない。もっとこう俺が考えてたのは、普通に、一緒に買い物する感じだったんだけど。む、と考えこんで、唸って、溜息吐いて、携帯を取り出す。あんまりこの手には頼りたくなかったけど、仕方ない。オーディエンスは無し、フィフティ・フィフティも提示されないので、テレフォン頼みだ。 「もしもーし」 『もっしもーし!どしたー!?』 「声でけーし後ろうっせーな!?お前今、…あー、カラオケだったっけ」 『そーそー。あ、そっちはどう!?どう!?マジで電話してくるとか超ウケるんだけど〜チャン何してんの〜?』 「…なんか今すげー微妙な空気なんだよな」 『えっマジか何したのアンタ』 「わかんね。わかんねーからお前に電話したんだわ」 『アハハあたしそんな崇められるほどの恋愛マスターじゃないって〜よせやい〜』 「お前なんか今日のことデートがどうとか俺がどうとか余計なこととか言ってないよな?」 『えっ原因あたしだと思われてんの?心外なんですけど』 『ちょっと次誰〜?電話まだ終わんないわけ〜!?』 『あ〜ごめんごめーん!よし分かったじゃあ悩める高尾の為にこの向井様が応援ソングを電話越しに歌ってあげよう!西野カナでいい?』 曲が始まる前に通話を切った。なんにも解決しなかったわ。いや、でも向井が余計なこと言ったわけでもなんでもないなら、サンとのこの微妙な温度差は何なんだろう。やっぱ俺が気付かない内に何かしちまったんだろうか。はあ、と再度溜息を吐いて顔を上げたら、視線を感じた。サンが俺の方を見ていた。俺と目が合うと、ぎくっと肩を揺らして慌てて目を逸らす。ああもうやっぱ気になる。さっさとプレゼント選ぶどころか気になってそれどころじゃない。ずいっと一歩近づくと、サンが後ずさってきょろきょろ辺りを見回すけど、逃げる場所が無かったので肩を縮ませた。 「さ」 「い、今の!電話!」 「…え、電話?」 「……その…本人に、聞いたのかなって。どんなのが欲しいのか。何か、言ってました?」 「あ…あー、いや、今のは違う違う。向井にちょっと用があって電話しただけ」 「そ、そっか…電話、仲良さそうだったから…」 「そっか?俺と向井がげらげらやってんのなんてサンいっつも見てるじゃんよ」 「うん……あの…さっき趣味合いそうって言ってくれたけど…私じゃなくて、向井さんみたいな女の子じゃ、ないの…?」 「ん?ああ、俺と向井が似てるから?や、でも俺の妹、」 「高尾くんに似合うのは、向井さんみたいな、」 「……」 「……」 「…ん?」 「え?妹…?」 お互いに違和感を感じて顔を見合わせる。キラキラした女物のアクセサリーに囲まれながら、俺達二人は店の中でしばらく沈黙した。俺達の他にも客はいるし、他校の制服の女子がきゃいきゃい言いながら小物に手を伸ばしていた。そんな店の中で突っ立ってる俺らは多分邪魔で、でもお互い本当にぽかんと固まってて動けない。なんか、違和感。そんで、その違和感の正体が、分かったような、でもあと一押し決め手に欠けるような、もやもやとした気持ちになる。けれどその直後にサンが呟いた言葉で、全部のピースが埋まって、ぱちんと謎が解けた。 「あの…高尾くんがプレゼント選んでる相手って…」 「サン、もしかして勘違いしてる?」 そういえば、この「デート」の話が出たあの日、俺はもともと向井と喋ってて…あとからサンを巻き込んだんだった。「高尾がプレゼント選ぶの手伝ってほしいんだって」「女の子にプレゼントするの慣れてないんだって」――それだけの情報しか、あの時、聞いてなかったとしたら?それ以前の会話が耳に入ってなかったのに、詳しいこと全然聞いてないのに、「お役に立てるなら」という理由だけで頷いたんじゃないか、この子。 「…妹さん、です、か」 「うん」 「妹…」 ぽつりと呟いて、俺と目を合わせて、それからみるみるさんの顔が赤くなる。かわいそうなくらい真っ赤に。なんとなくだけど、俺はこの後の展開が読めた。いやもうお決まりすぎて、絶対の自信がある。想像つく。直後、予想通りにさんがバッと頭を下げた。うん、やっぱり、こうだよなあ、サンって。 「ごっごめんなさい!!私ちゃんと話聞いてなくて勘違いしてたみたいで…!本当すみません!!」 「や、べつにサンが謝ることじゃないような?」 「いや、でも私、てっきり、あああ本当すみません!何言ってんだコイツでしたよね本当あああ恥ずかしいごめんなさい本当ごめんなさいでした申し訳ない」 「いいって!俺がちゃんと伝えてなかったら勘違いさせたんだし」 「う、でも…」 「てか、妹じゃなくて彼女だと思った、ってこと?」 俺の質問に、耳まで真っ赤にしてこくこく頷いたさん。へえ、って呟いた声が自分でも意識しない内に少し嬉しそうな声音になって、それを相手にも気付かれたのか、そーっとさんが顔を上げて、俺を見た。 「妹で、ほっとした?」 あ、なんか、この訊き方意地悪だな、自分で言っといてなんだけど。でも、だって訊いておきたいだろう、ここは。「アイツこういうかわいーの好きそう」とか、「サンと趣味合いそう」とか、俺の言葉を居もしない彼女への台詞だと勘違いした時のさんの顔は、誰がどう見たって、浮かない顔だった。複雑そうに眉を下げていた。それって、やっぱり、そーいう意味じゃんか。(という俺の勝手な願望)さんは俺の「ほっとした?」という言葉に目を丸くして、それから、「ほ、ほっと…?」ってあわあわしながら、何かを確認するように胸に手をあてて、もう一度、「ほっと…」って呟いて、俺の顔を見上げた。今度は少し、切り口を変える。 「俺に彼女いたら、嫌だった?」 さんが固まって、それから数秒経って顔赤いまま否定でも肯定でもない反応を返す。「ええと、そんな、高尾くんに彼女がいるのだめとかそんな、ひとの不幸を願うような、幸せを僻むような、そういう気持ちはまったくなくて、ですね…!?」ってアワアワしてる。いや、何も俺だってそんな理由で嫌だって言われたらこんな今みたいにちょっと嬉しそうな顔なんかできねえわ。しってるよ。そんな理由で嫌だったんじゃなくってさ、複雑そうな顔してたんじゃなくってさ、もっとこう、さ。(俺を喜ばせる答えが、一個、あるはずなんだけどな) 「だ、だって、その、彼女さんとか、好きな人…がいるのに、私なんかとこうして二人で出掛けてたりしたら、いくらプレゼントを選ぶお手伝いの為とはいえ…申し訳ないから…」 「そっかー、じゃあやっぱほっとしたわけかー」 「えっえっと…その…」 「んー?」 「…ほっと、した、かも。高尾くんとのお出かけを楽しめないのは、嫌、です、し…」 その言葉が聞きたくて煽ったのは自分の方なのに、赤い顔して、本当に認めてしまうさんが、素直すぎて、いいこすぎて、なんかもうずるい。 「……な、なんかごめん、高尾くん、今の言葉無しの方向で…!」 「え、なんで」 「だってやっぱり、自分で言って、なんか嫌だ、嫌な子だ…!何様なんだ私…!高尾くんに彼女がいなくて嬉しいとか、そんな、すごく失礼な気がする…だって高尾くんすごく優しいですし、いい人ですし、絶対、すぐ、素敵なお相手と出会うと、思うので…!」 「いやー多分今の流れでそんなフォロー必死に入れてくるのサンだけだと思うわ」 「や、ほんとう、私なんかが今高尾くんの時間を頂いてお出かけしてるのが恐れ多いというかなんというかこう」 察してほしいわ、俺がにやけてたことに。そんな申し訳無さそうに青い顔でぶつぶつ言う必要ないっしょ。ずれてる。でもそこがさんらしい。さすがのさんだ。俺は小さく笑って、すぐ傍にあったテーブルの上のヘアピンを手に取った。まだぶつぶつ言ってるさんの髪に、直接は付けないけど、つけたらこんな感じかな、って適当な位置に合わせてみる。先っぽの花のモチーフがカワイーやつ。さん、たまにピン使ってるし、こういうの似合うんじゃねーかな。…って、勝手に思っちゃうとか、はずかしーわ、俺はサンのなんだっつーの、彼氏かっつーの。 俺が勝手にさんの髪にヘアピンを合わせているのに気付いて、彼女はぱちぱちとまばたきを繰り返す。鏡の前で合わせるのとは違うから、さんには自分に似合ってるのかどうか、確認は出来ない。 「た、高尾くん…?なあに、何持ってるの?」 「ん?これ。花のやつ」 「あ…可愛いね、これ!妹さん、こういうの好き?」 「んー、どうだろ」 「そ、そっか?」 「さんは」 「うん?」 「彼氏いんの?」 「え!?…え、い、いません」 「そっかー」 「えっ?ええ?」 「ほっとした」 「え…?」 「俺、さんに彼氏いたら嫌だった。いなくてよかった。超安心した」 ヘアピンをそのまま自分の手の中に包んで、さんに笑う。さんがまたまばたきを繰り返す。え?って反応のまま固まって、どんどんまた顔が赤くなって、余計に、「え?え?」って焦っていく。おんなじ言葉そっくりそのまま返してこんなに狼狽えてくれるんだからさ、さっき自分が俺に言ってくれた言葉も、おんなじような意味に聞こえるんだって気付いてほしい。全然嫌な気持ちにならないよ。俺は、期待しちゃうよ。さん。 「さん、前にさ、俺のこと好きでも嫌いでもないってバッサリ言ったの、覚えてる?」 「え…、あ…うん、そんなこともあったね…?」 「あれって、今も変わってねーのかな、あの時から」 以前、俺のこと嫌いでも全然気にしない、さんに嫌われててもべつにいい、って言ったときのこと。さんは「嫌いなわけじゃない」って返した。「だからといって好きでもない」とも言った。俺はそれを聞いて笑ったし、微塵もショックなんか受けなかったし、強がりでもなんでもなく本当に、さんに嫌われていようが気にならなかった。まあ仲良くなれそうなタイプではないかなーとか思ってたし。俺の中でさんの存在ってただのクラスメートで、特に喋ったこともなくて、接点なんかない相手だった。好きじゃないって言われても、なんとも思わなかったんだ。当たり前の話。 でも今俺はきっと、「さんに嫌われてても平気」だなんて、言えないんだろう。嫌ってほしくない、好かれたいと、願ってしまうんだろう。 「今も変わってない?」って訊いたのは俺なのに、その言葉は自分に返ってくる。あの時から、変わってねえの?俺の中の、さんっていう存在は。 「…そ…それは、どういう…」 「んー…俺のこと、好きか嫌いか、どっちかになったかなーって」 「き、嫌いになんてなるわけないよ!」 戸惑いつつもハッキリとそう告げて、でも自分自身の言葉にハッとして顔を赤らめる。好きか嫌いかの二択で、「嫌いなわけない」って言われたら、もう答えはあとひとつしか残っていない。それでも、彼女がここで「だけど好きなわけでもないよ」って言ったら、あの時と同じ。変わってないってことになる。さんは可哀想なくらい顔を真っ赤にして、泣きそうなくらいに困って、俯いたまま、「わかんない、です、けど…!」と声を絞り出した。ちょっとだけ意地悪く、「けど?」って続きを煽る。 「た、高尾くんも、私が前に、なんでそんなふうに優しくしてくれるのって聞いたら、分かんないやって言ったから、おあいこだと思うっ!」 俯いてそのまま黙っちゃっても不思議じゃないのに、サンはぐっと拳をつくって俺にそう言った。赤い顔のまま、やけくそのように声を張って、はっきりと。きょとんとする俺をハッと見上げたので、目が合ってお互い固まる。沈黙のあと、プッとふきだしたのはもちろん俺の方だった。 「わらうところでした…!?」 「ぶはっ!いーや、だって、ははっ!マジか!確かに!痛いとこ突かれたわ〜!サンってばマジ鋭いわ〜!」 「う、うん…?」 「ははっ!そっか、そーだよな、わかんねぇんだった、そういえば。うん、おあいこだわ」 うん、俺だけ言わせるのはきっとずるい。でもいつか、そのうち、俺が答えを口にすることがあったらその時は、きっと彼女も答えを出してくれると、勝手に思ってる。 ってわけで!と唐突に話を区切って、俺はサンの顔を覗き込んだ。それも、にんまりと笑いながら。ぎょっとして身を引こうとするさんを逃すまいと即座に言葉を続ける。 「プレゼント選び、再開〜!」 「へっ!?あ、そそそうだよ!早く選びましょう!」 「一緒に選んでくれんの?」 「うん!…お役に立てるかは分かりませんが…」 「妹へのプレゼントは一緒に選んでくれるんだ、サン」 「!! だ、だって彼女さんへのプレゼントだったら、あんまり、他の女の子の意見とかじゃなく、高尾くん自身で決めた方がいいだろうなっていうかなんていうか…」 へーえ、ふーん?なんて俺の意地悪な相槌に、さんがまた真っ赤になって視線をみるみる降下させる。まあ、言いたいことは分かる。気持ちは分かる。俺だってもし彼女にプレゼント選んでもらうなら、例え友達であれ自分以外の男と一緒に出掛け先で選ぶより、彼女一人で悩んで選んでくれた方が嬉しいかもしれない。いつかサンにも、プレゼントを選んでくれるような彼氏が出来るんだろう。彼氏の為にさんがプレゼントを選ぶ未来もあるだろう。そんなこと思ってちょっとだけムッとするような俺はきっと、 「なー、サン!これなんかどうよ!」 「えっ?えっ、何それ何の形…!?マンボウ…?なんだろう…」 「お。これなんて見てみ?ちょっと真ちゃんに似てる」 「ええっ!緑間くん怒っちゃうよ!…ふふっ」 (俺はきっと変わったよ。その笑顔を知らなかった頃の俺とは) |