腐臭の庭

あ〜〜あ、どうして「前」の記憶を持っているのが私なんだろう。私だけなんだろう。おかげで嫌な思いするの私だけじゃないか。だって私知ってるもん。私だけが知ってるもん。このまま行けば触れちゃいけない大型シャドウ全部倒すことになっちゃうし秋には荒垣さんが死んじゃうし美鶴先輩のお父さんも死んじゃうし綾時がやってきちゃうしいやべつに綾時自体は良い奴だし全然来てもらっていいんだけど綾時と戦うことになっちゃうしニュクスは強いし怖いし倒せてもその後リーダーは――とにかく嫌なことばっかりなんだって。それが「前」の記憶なんだって。私だけがここじゃない2009年春から2010年春にかけての記憶を持っていて、起こること全部分かってて、でもそんなのゆかりに話したって美鶴先輩に話したって信じてくれないだろうし証拠とか何もないし、いや〜でもこのまま知らないふりしちゃうのもなあって私なりに考えて、じゃあ何をどうすればそれら全部を食い止めることができるかって、考えた結果、たった一人、この人を、止めることが、できたら、って、思ったんだ け ど
「なるほどねえ。君はいつも僕に警戒心剥き出しだったからどうしたものかと思っていたけれど、まさか計画がバレているとはね。なるほどなるほど。それで君はたった一人で、僕の計画を止めようとしたんだね?馬鹿な事はやめろ、と。頼みに。くっ、ふふ、ははは!平和的考えだねえ。どうして、僕の計画を隅々まで熟知しているくせに、こうなると予想出来なかったんだい?」
腕を拘束されたまま体を床に押し付けられている。ほっぺたが床に思い切りくっついてる。まじか。汚い。何か構える音がした。あ、なんかこめかみにあてがわれてる。これ多分拳銃だな。そういえばこの人銃持ってたな。美鶴先輩のお父さん撃ってたもんな。ああそっかそうだよねえ人を平気で殺せちゃう人間だって分かってたのになんでわたし丸腰で話し合いに来ちゃったんだろう。計画ばれてるって分かったら口封じするに決まってるよねえそうだよねえ。心のどっかで、まさか殺されはしないだろうって、平和的解決が出来るって、思っちゃって、油断しちゃって。私一人の死くらい簡単に隠蔽できちゃうってさあ。
「残念ながら君は子供だ。爪が甘い。本当に残念だ。もう少し上手く立ちまわっていたら、僕の寝首を掻く事も出来ただろうに。…そうだな、例えばー…警戒ではなく、好意的な態度を取って油断させておく、とかね。僕だったらそうするだろうね。現に今まさに僕はそれなわけだ。桐条君達やそのお父上はみんな騙されているよ。滑稽だね。君もそう思うだろう?全て分かっているのなら、僕を信用している彼らがさぞ滑稽に映るだろう?」「あーもういいですよ早く撃てばいいじゃないっすか私の負けです馬鹿でしたー」
命乞いをしない私がつまらないんだろう。幾月は少し不満そうに言う。「私はこれでも大人として君に助言をしているんだよ。次に活かしたまえ、とね。…まあ、『次』は無いけれど」それがきっと最後の会話だろうと思った。引き金に指を掛ける気配。あ〜あ、バッドエンド回避のために動いたはずがやっぱりバッドエンドじゃないか。いやデッドエンドじゃないか。ゲームオーバーだ。コンティニューしますか?イエス、オア、はい。

『次』は私がアンタを殺してやる」

あ、でもこの人私が何もしなくても死ぬじゃん。ぱーん。脳みそぶっ飛んでおーわり。